お役立ちコラム一覧

相続税における株式の評価方法とは?上場株・非上場株をわかりやすく解説

2026年02月02日
  • 株式は「現金と同じ感覚」で相続すると失敗しやすい

  • 上場株と非上場株で評価方法が大きく異なる

  • 相続税額に直結するため、正しい理解が重要

目次

相続税における「株式評価」とは何か

相続税における株式評価とは、被相続人が保有していた株式を、相続税計算のために金額換算することを指します。
相続税は「時価」で計算されるのが原則ですが、株式については恣意性を排除するため、国税庁が定めた評価ルールに従って評価額を算出します。

この評価額は、相続税の課税対象となる「相続財産の額」を決定する重要な要素であり、評価方法を誤ると、相続税額が大きく変わる可能性があります。

株式も相続財産として評価対象になる

株式は、現金や不動産と同様に相続財産の一つです。
上場株式・非上場株式を問わず、被相続人が保有していた株式は、すべて相続税の課税対象になります。

たとえ株式を売却していなくても、

  • 証券口座に残っている株式

  • 会社オーナーが保有する自社株

などは、相続開始時点で評価され、相続税計算に含まれます。

相続税評価額と実際の売却価格は一致しない

相続税評価額は、実際に売却したときの価格と一致しないことが多い点に注意が必要です。

  • 上場株式:市場価格に近いが、必ずしも売却価格と同額ではない

  • 非上場株式:売却自体が困難で、評価額と換金価値が大きく乖離することもある

つまり、
「評価額=手元に入るお金」ではありません。

このズレを理解せずに相続税だけを見て判断すると、
「納税資金が足りない」「売れない株で税金だけ高い」
といった問題が生じます。

なぜ株式の評価は難しいのか

株式評価が難しい理由は主に次の3点です。

  1. 株価が常に変動している

  2. 上場・非上場で評価方法が全く異なる

  3. 評価ルールが専門的で複雑

特に非上場株式は、
会社の規模・利益・純資産・配当状況などを総合的に考慮するため、
一般の方が独力で正確に評価するのは非常に困難です。

株式の評価方法は「上場株」と「非上場株」で大きく違う

相続税における株式評価は、
上場株式か非上場株式かによって、評価方法が根本的に異なります。

まずは、自分が相続する株式がどちらに該当するのかを正確に把握することが重要です。

上場株式と非上場株式の違い

  • 上場株式
    証券取引所で売買され、市場価格が存在する株式

  • 非上場株式
    証券取引所で取引されておらず、市場価格が存在しない株式(中小企業の自社株など)

この違いが、そのまま評価方法の違いにつながります。

評価方法が異なる理由

上場株式は、市場で日々価格が形成されているため、
客観的な株価を基準に評価できます。

一方、非上場株式には市場価格がないため、

  • 会社の財務内容

  • 利益水準

  • 配当状況

などから、理論的に価値を算定する必要があります。

どちらに該当するかで相続税額が変わる

同じ「株式」でも、

  • 上場株式 → 比較的シンプル

  • 非上場株式 → 評価次第で大きな差

となり、相続税額に数倍以上の差が出ることもあります。

上場株式の相続税評価方法

上場株式の相続税評価は、一定のルールに従って機械的に算出されます。

原則は「相続開始日(死亡日)の株価」

上場株式の評価は、原則として
相続開始日(被相続人の死亡日)の株価を基準に行います。

ただし、死亡日が休場日の場合は、直近の取引日が基準となります。

4つの株価のうち最も低いものを選ぶ仕組み

上場株式の評価では、次の4つのうち最も低い株価を選択できます。

  • 相続開始日の終値

  • 相続開始月の平均株価

  • 前月の平均株価

  • 前々月の平均株価

これは、相続人に不利にならないよう配慮された制度です。

株価が大きく変動している場合の考え方

相続直前・直後に株価が大きく変動している場合でも、
評価はあくまで定められた4つの基準に基づいて行います。

「たまたま高い日に当たった」「暴落前だった」という場合でも、
感覚ではなくルールに従って冷静に評価する必要があります。

配当落ち・権利確定日と評価の関係

配当落ちや権利確定日による株価変動も、
評価上は通常の株価変動として扱われます。

特別な補正は行われず、
あくまで対象期間の株価データに基づいて評価されます。

非上場株式(自社株)の相続税評価方法

非上場株式(自社株)の評価は、
相続税実務の中でも最も難しい分野の一つです。

非上場株式が「最も難しい」と言われる理由

非上場株式が難しい理由は、

  • 市場価格が存在しない

  • 会社ごとに状況が全く異なる

  • 評価方法の選択で金額が大きく変わる

という点にあります。

同じ会社でも、評価方法の違いで
評価額が数倍変わるケースも珍しくありません。

原則的評価方式と配当還元方式とは

非上場株式の評価には、主に次の2つの方式があります。

  • 原則的評価方式
    会社の規模や財務内容に基づいて評価

  • 配当還元方式
    主に少数株主が対象で、配当額を基準に評価

どちらを使うかは、
会社規模や相続人の立場によって決まります。

会社規模によって評価方法が変わる

非上場株式は、

  • 大会社

  • 中会社

  • 小会社

といった会社規模に分類され、
規模に応じて評価計算の比重が変わります。

この判断を誤ると、評価額が大きくズレるため注意が必要です。

評価額が高額になりやすいケース

次のような場合、非上場株式の評価額は高額になりやすくなります。

  • 利益や内部留保が多い会社

  • 不動産を多く保有している会社

  • 代表者が株式を集中保有しているケース

「会社にお金がある=相続税評価が高くなる」
という点は、特に注意が必要です。

株式評価で相続税額が大きく変わるポイント

株式の相続税評価は、「株がいくらか」だけで決まるものではありません。
評価方法の選択・相続人の立場・保有割合といった要素によって、相続税額が大きく変わる点が特徴です。

同じ会社の株式であっても、条件が少し違うだけで評価額が大きく変動するため、注意が必要です。

評価方法の選択による差

特に非上場株式では、

  • 原則的評価方式

  • 配当還元方式

のどちらを用いるかによって、評価額に大きな差が生じます。

原則的評価方式では、会社の利益・純資産・規模などが反映されるため評価額が高くなりやすく、
配当還元方式では、配当水準を基準にするため評価額が抑えられる傾向があります。

どの評価方法が適用されるかは、
会社の規模や相続人の立場によって機械的に決まるため、
「有利な方法を自由に選べるわけではない」点も重要なポイントです。

相続人の立場による違い

非上場株式の評価では、
相続人が会社の経営に関与しているかどうかが大きな判断基準になります。

例えば、

  • 経営権を持つ立場 → 原則的評価方式

  • 少数株主の立場 → 配当還元方式

となるケースが多く、
誰が株式を相続するかによって評価額が変わるのが非上場株式の特徴です。

そのため、遺産分割の方法次第で、相続税額に差が生じることもあります。

株式の保有割合が評価に与える影響

株式の保有割合も、評価額に大きく影響します。

  • 過半数を保有する場合

  • 一定割合以上を保有する場合

には、経営支配力があると判断され、評価が高くなりやすい傾向があります。

逆に、少数株主としての保有であれば、
評価額が抑えられるケースもあります。

この点を考慮せずに遺産分割を行うと、
「同じ株なのに相続税負担が不公平になる」
といった問題が生じることもあります。

株式を相続した場合のよくある勘違いと注意点

株式相続では、誤った思い込みが原因でトラブルや税務リスクが発生しやすいのも特徴です。

「株は売らなければ税金がかからない」は誤解

「株を売っていないから、まだ税金はかからない」と思われがちですが、
これは大きな誤解です。

相続税は、
相続が発生した時点で株式を保有していれば課税対象になります。

実際に現金化していなくても、
評価額に基づいて相続税は計算され、納税義務が生じます。

評価を間違えると税務署に否認されるリスク

株式評価を自己判断で行い、

  • 評価方法を誤っている

  • 計算根拠が不十分

といった場合、税務署から否認されるリスクがあります。

その結果、

  • 追徴課税

  • 延滞税

  • 加算税

が発生する可能性もあり、
「節税のつもりが、かえって負担が増える」ケースも少なくありません。

分けにくさが原因で相続トラブルになることも

株式は、現金のように簡単に分けることができません。

特に非上場株式の場合、

  • 売却しにくい

  • 評価額と実際の価値が一致しない

といった事情から、
遺産分割の話し合いが難航しやすい財産です。

結果として、

  • 特定の相続人に不満が集中する

  • 相続争いに発展する

といったケースもあります。

株式相続は専門家への相談が重要な理由

株式相続は、
「税金」「評価」「分割」「経営」
といった複数の要素が絡み合うため、専門家の関与が非常に重要です。

自己判断が危険なケースとは

次のような場合は、自己判断が特に危険です。

  • 非上場株式を相続する場合

  • 相続人の中に会社関係者がいる場合

  • 株式の保有割合が大きい場合

  • 納税資金に不安がある場合

これらに当てはまる場合、
早い段階で専門家に相談することが安全策となります。

税金だけで判断してはいけない理由

株式相続は、
「相続税がいくらか」だけで判断すると、将来問題が生じやすくなります。

  • 経営への影響

  • 相続人間の公平性

  • 将来の売却や承継

なども含めて考えなければ、
一時的に税金が安くなっても、後で大きなトラブルになることがあります。

早めの相談が将来のトラブルを防ぐ

相続発生後に慌てて対応するよりも、
生前から株式評価の仕組みを理解し、相談しておくことが、
結果的に相続人全員の負担を軽くします。

早めの相談は、

  • 相続税の見通しを立てる

  • 納税資金を準備する

  • 相続トラブルを防ぐ

という点で大きな意味があります。

株式相続における申告・手続きと実務上の注意点

株式を相続した場合、評価額の算定だけでなく、相続税の申告や各種手続きを正確に行うことが重要です。
被相続人が亡くなっ後、一定期間内に必要な確認や書類の準備を進めなければなりません。

株式を取得した場合の申告と基礎控除の考え方

相続によって株式を取得した場合、その相続税評価額(価額)をもとに、他の相続財産と合算して相続税がかかるかどうかを判断します。
相続税には基礎控除
があり、

3,000万円+600万円×法定相続人の数

の範囲以内であれば、申告自体が不要になるケースもあります。

ただし、株式の評価は複雑で、評価方法を誤ると「基礎控除以内だと思っていたが、実は申告が必要だった」という事態も起こり得ます。

証券口座・名義の確認と必要書類

上場株式の場合、まず行うべきは証券口座の確認です。
被相続人名義の口座に保有されている株式は、相続手続きを経て相続人名義へ変更する必要があります。

この際、一般的に次のような書類が求められます。

  • 戸籍謄本等の相続関係書類

  • 遺言書、または遺産分割協議書

  • 相続人全員の同意を示す書類

非上場株式の場合は、会社が株式を発行しているため、株主名簿の名義変更手続きも必要になります。

配当金・権利確定日の扱いに注意

相続開始日以後に支払われる配当金については、

  • 相続財産として扱われるもの

  • 相続人の所得として扱われるもの

に分かれるため、権利確定日や支払日を確認する必要があります。

ここを誤ると、相続税と所得税の両面で処理を間違える可能性があります。

遺言書・遺産分割協議と株式の分け方

株式は分割しにくい財産であるため、遺言書の有無が相続手続きの円滑さに大きく影響します。
遺言書がない場合は、相続人全員による遺産分割協議が必要となり、株式の帰属を巡って意見が対立することも少なくありません。

特に非上場株式では、

  • 誰が株主になるのか

  • 経営権や議決権をどう扱うのか

といった点まで考慮する必要があります。

生前の贈与・特例を活用した対策という考え方

株式の相続では、生前贈与を利用した対策が検討されることもあります。
贈与税の税率や各種控除、特例を活用することで、将来の相続税負担を抑えられるケースもあります。

ただし、

  • 贈与後も実質的な支配が変わらない

  • 名義だけを移した

と判断されると、相続税の計算上否認されるリスクがあるため、慎重な判断が必要です。

株式評価・相続対策は業種や会社規模で異なる

非上場株式の評価や相続対策は、業種や会社の財務状況によって大きく異なります。
同じような会社に見えても、類似業種の株価相場や財務内容の違いにより、評価額に差が生じます。

そのため、一般論だけで判断せず、自社の状況に即した知識と確認が欠かせません。

株式の相続税評価は「早めの理解」がカギ

株式の相続税評価は、
知っているか知らないかで結果が大きく変わる分野です。

  • 評価方法

  • 相続人の立場

  • 株式の保有割合

これらを早めに理解し、
判断に迷う場合は専門家に相談することで、
不要な税負担やトラブルを避けることができます。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい