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孫に対する贈与でも利用できる相続時精算課税制をチェック

2021年10月24日

財産を引き継ぐに当たり、生前贈与について検討している方もいるでしょう。生前贈与をする際の課税の方法として「相続時精算課税制度」があります。相続時精算課税制度は暦年贈与と選択することができます。しかし、この相続時精算課税制度は誰もがお得に利用できる制度ではないので注意が必要です。

また、贈与をする側と贈与を受ける側で誰が対象になるのかに関しても疑問に感じている方がいるのではないでしょうか。例えば「相続時精算課税制度を活用したいけれど孫も対象になるのか?」と悩んでいる方もいるはずです。

そこで、孫への贈与にも相続時精算課税制度を活用することが可能であるのかについてご紹介します。相続時精算課税制度を利用する際には、本当に利用したほうが良いのかよく考えましょう。

深く考えずに相続時精算課税制度を活用した結果、かえって損をしてしまう可能性もあります。また、2024年から大幅に制度が改正されることになりましたので、新制度の概要やこの制度を活用したほうが良いケースについてもチェックしていきましょう。

平成27年から相続時精算課税制度が孫にも適用可能

現在、相続時精算課税制度では、子だけでなく、孫への贈与も対象となっています。もともと、贈与を受ける受贈者として認められていたのは「20歳以上の推定相続人」でした。また、贈与する側にあたる贈与者は「65歳以上の父母」と定められていました。

ですが、平成27年に税制改正があり、受贈者は「20歳以上の推定相続人または孫」と変更されています。贈与者に関しても「60歳以上の父母/祖父母」に要件が変更されました。

中には、自分が亡くなった際には孫に財産を相続させたいと考えている方もいるでしょう。しかし、子供が健在の場合、その子供にあたる孫に相続の権利はありません。

孫に相続させるためにはその旨を記載した遺言書を作成する、孫と養子縁組をするなどの方法があります。しかし、今回ご紹介している相続時精算課税制度を活用すれば、例え子供が健在の場合でも孫に多額の生前贈与が可能です。

孫に相続時精算課税制度を利用したほうがいいケース

通常、孫に相続等で財産を渡すとそれにかかる税額が2割加算されてしまいます
※被相続人の子供がなくなっているなどの理由から孫に相続の権利が移る代襲相続人は除く。

そのような状況でも、相続時精算課税制度で得をする可能性があるのはどのようなケースでしょうか。ポイントは、相続する財産が基礎控除の範囲を超えない場合です。

基礎控除額の金額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。生前贈与した分と相続財産を合わせた金額の合計が相続税の基礎控除額に収まる場合、将来、相続税はかかりません。

他にも、遺言書を作って孫に相続する形だと相続で争う可能性があるケースもあるでしょう。このようなケースでは、事前に相続時精算課税制度を活用しておいたほうが良い可能性があります。

さらに相続時精算課税制度を利用した贈与財産は贈与時の価額で相続税を計算します。お金だけでなく、株式や不動産も贈与することが可能ですので、同じ税率でも将来的に値上がりする可能性が高い財産がある人などは、生前に相続時精算課税制度を利用しておくのも良いでしょう。

相続税精算課税を利用する場合の注意点

相続時精算課税制度を利用する場合は注意点も考慮して利用する必要があります。

注意しなければならないポイントとして、相続時精算課税制度を利用しても相続税の節税効果はありません贈与した財産についても相続税を納付しなければいけませんので注意しましょう。さらに、一度使ってしまったらその後はすべての贈与財産は相続税の対象になることや、他の相続人に知られるなどのデメリットもあります。

これまで、相続時精算課税制度が使われなかった理由として、暦年贈与制度の非課税枠がありました。暦年贈与制度では1年間(1月1日から12月31までの間)に110万円以内であれば非課税で贈与をすることができます。

例えば、500万円の資金を相続時精算課税制度を使って贈与をするのであれば、暦年贈与で100万円ずつ5回に分けて贈与することで非課税で遺すことができます。

相続時精算課税制度も暦年贈与と同じように年間110万円までは非課税の枠が新設されました。2023年までは毎年、暦年贈与を活用していた人も、相続時精算課税制度の利用も増える可能性が高いでしょう。

暦年贈与の場合は、税務署に資料を提出する必要はありませんが、相続時精算課税制度を適用する場合は資料の提出義務がありますので注意が必要です。

贈与契約は贈与は双方が合意して行う契約行為ですので、生命保険のように単独でできるわけではありません。

税務調査が入った際に対応するために、双方が署名した贈与の契約書を遺しておくなど、しっかりとした証拠を残しておいたほうがよいでしょう。

相続時精算課税制度を使うことで、配偶者の税額軽減などに代表される他の特例のように税金面での控除を受けたり、還付を受けたりできるわけではありませんが、現金以外に株や不動産など今後値上がりが期待できる資産や、収益を生む資産を贈与した場合にはメリットがあります。相続時精算課税制度は贈与した時点の時価で評価することになりますので、贈与で取得した後に値上がりした部分や贈与後に発生した財産についは課税の対象にはなりません。

相続時精算課税制度を利用して贈与をすることで、バランスが崩れて遺留分を侵害してしまうケースもあります。自分のケースはお得なのか、損をしてしまうのか、相続人間の関係性など、注意点もよく確認したうえで検討が必要です。

別の方法を検討した方が良いケースも

相続時精算課税制度はあくまで目的ではなく、手段です。具体的に実現したいことを明確にすれば、別の方法の方が良い場合もあります。例えば、一人の孫に特定の土地を遺したいのであれば、遺言書を作成しておくことで遺贈することができます。相続時精算課税制度は非課税になるような制度ではありませんので、遺す先を決めるだけであれば、遺言書を作成する方が良いケースも多くあります。

相続時精算課税制度を利用して財産を渡す場合、その財産に限り遺す人を決めることになります。そのため、他の財産については相続人間で協議をする必要があります。

遺言書を作成しておけば、全財産まとめて誰に遺すか決めることができます。場合によっては、遺言を書いておいたほうがよいでしょう。

また、教育資金の贈与であれば、1,500万円まで一括で贈与をしても非課税になる特例制度があります。贈与を受けた孫が30歳になるまでに使い切る必要がありますが、高校生未満の年齢であれば、一般的にこれから一定の費用はかかります。

学校や塾などの教育資金として使用する予定なのであれば、相続税対策としてもこの特例を利用することをおすすめします。

教育資金贈与の特例を利用するためには、通常の贈与とは異なり、信託銀行など金融機関の口座を開設し、贈与された資金を入金し、管理してもらい、学校の授業料や塾、習い事などの教育費に費用がかかる都度領収書を提出して請求する必要があります。普通の預金とは異なり、教育資金専用の口座を作成する必要がありますので、取り扱いのある金融機関に相談してみるとよいでしょう。

他にも直系尊属から子や孫などが住宅を購入するための資金や結婚・子育てを行うための資金であれば非課税で贈与をできる制度があります。特例制度をうまく利用することで、書類の提出などの負担はありますが、的を得た有効な対策ができますので、相続税の課税対象となる財産を減らすことができスムーズに次の世代に財産移転をすることができるでしょう。

ただし、特例の条件に合致するからといって、相続人のうち1人に多くの金額を贈与した場合、不公平となってしまい、親が亡くなると遺産の分割で揉める可能性もあります。生命保険の保険金は贈与をした子供とは別の人を受取人にしておくなど、それぞれの財産配分にも配慮して贈与を行うようにしましょう。

利用は慎重に

いかがだったでしょうか。今回は、相続時精算課税制度の特徴や利用したほうが良いケースなどをご紹介しました。

まずは、活用することが本当にお得か見極めが必要です。相続時精算課税制度による贈与税の申告手続きなどの対応は、とても複雑になります。総合的に相談が可能な税理士に話を聞いてみてはいかがでしょうか。

税理士は税務の専門家ですので、贈与税や相続税の制度をふまえてサポートをしてくれます。申告を依頼する場合は費用がかかりますが、初回の相談はサービスで行ってくれたり、セミナーを開催していることもあるので、気軽に相談してみるとよいでしょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい