「遺言書の指定で相続財産をもらえなかったときは、遺留分侵害額請求を行えると聞いたけど内容がわからない」と困っていませんか。遺産の分配方法に納得がいかない場合、どうにかしたいと考える方が多いでしょう。被相続人と疎遠だった場合、勝手に相続放棄をするだろうと決めつけられて、全額を相続人の代表として相続する一人に遺す内容となり、遺留分を侵害を受ける例は実際に多いものです。また、東京や大阪などアクセスがよく地価が高い地域の場合は自宅を一人に相続させることで遺留分侵害になってしまうこともあります。
遺留分侵害額請求は、一定の法定相続人が最低限の財産を受贈できなかったときに相当額を請求することです。したがって、遺言書の指定で相続財産をもらえなかったときなどに問題を解決できる可能性があります。
相続手続きは相続発生から10カ月以内に税務署に書類の提出や財産の証拠書類としてさまざまな書面を提出する必要があります。通常でも負担は大きいものですので、遺留分の請求となるとさらなる負担が増えてしまいます。
当記事では、遺留分侵害額請求の基本的なポイントと遺留分侵害額の計算方法などを解説しています。以下の情報を参考にすれば、全体像をつかめるはずです。相続の分け方など役立つ知識を案内していきますので、お困りの方は参考にしてください。
遺留分侵害額請求とは何か
被相続人が財産を遺贈・贈与した結果、遺留分に相当する財産を取得できなかった一定の相続人(遺留分権利者)は遺贈・贈与で財産を取得したものに対し遺留分相当額の金銭を請求する権利(遺留分侵害額請求権)を有します。遺留分を侵害した人に対し相当額の金銭を請求することを遺留分侵害額請求といいます。かつては遺留分減殺請求といわれていましたが、2019年に行われた民法の改正を受けて、遺留分侵害額請求と呼び方が変わっていますが制度としては同じです。
遺留分は、一定の相続人が法律で取得を保証されている最低限の遺産です。
遺留分は民法1042条で定められており、請求が認められているのは、兄弟姉妹(甥・姪)以外の法定相続人です。具体的には、常に相続人となる配偶者・第1順位である子(代襲相続をした孫・ひ孫、養子縁組をした子なども含む)・第2順位である直系尊属(父母、祖父母など)が対象になります。
請求は各相続人が個別に行います。請求を行える期限は、相続が始まったことと遺留分の侵害があったことを知ってから1年以内です。1年間で何もアクションを起こさなかった場合、配分が確定し、遺留分を請求することはできませんので注意しましょう。
なお、相続開始したことを知らなかった場合でも、亡くなった日から10年間経過すると、権利が消滅し、請求権がなくなる点には注意が必要です。以上の期間内に権利を行使するか判断し、意思表示の申立を行わなければ、時効となり、遺留分を請求することはできません。
遺留分侵害額請求をするケースでは書類到着の時期も重要となりますので、内容証明郵便で送付するとよいでしょう。
遺留分の侵害があった場合、遺留分権利者は最低限の権利として遺留分を受け取ることが保障されています。そのため、遺留分は必ず請求することはできますが、法定相続分を請求できるとは限りません。他の相続人と折り合いがつかず、家庭裁判所での調停になりそうな場合は弁護士が在籍する法律事務所に相談するようにしましょう。
遺留分侵害額請求額の計算式は?
遺留分侵害請求額は次の流れで求めます。算定方法も説明しますが、計算式は簡単ですので、確認しておきましょう。
最初に、遺留分の割合に法定相続分をかけて各遺留分権利者の遺留分の割合を求めます。遺留分の割合は、遺留分権利者が直系尊属だけのときは3分の1、これ以外のときは2分の1です。
例えば、配偶者、長男・長女であれば、配偶者の遺留分割合は以下の通りです。
「1/2(遺留分の割合)×1/2(法定相続分)=1/4、長男長女の遺留分割合は「1/2×1/2×1/2(長男・長女で分割)=1/8」
財産額に応じて実際の金額が決まりますので、次に以下の計算式で遺留分を計算する基礎になる財産を求めます。相続人の財産がいくらあるか分からない場合は、被相続人の金融機関での預貯金、投資信託などの取引や土地・建物、金など現物資産も含まれますので、保有状況を調査します。投資信託や株式など、時価が変動する資産は相続が発生した時点での価格となります。基準となる財産が誤っていると、遺留分の額も誤りますので、詳細に調べておく必要があります。遺留分の基礎となる財産については民法1043条に規定があります。
財産の調査が完了したら早めにまとめて一覧にしていただくことをおすすめします。土地の評価は毎年7月1日に発表される路線価で評価を行います。売買する際の評価額とは異なりますので注意しましょう。
被相続人の遺産が隠されている場合には遺産確認の訴訟を起こすことができます。最初に財産の一覧を作る理由は、財産の一覧があったほうが話し合いがしやすいからです。全体像が把握できずに、一部の財産しかわからないまま、相手と話していてもなかなか話し合いはまとまらないからです。
・相続財産+贈与財産-債務額
上記のようにプラスの財産に一定の条件に該当する贈与財産を加算してからマイナスの財産を控除して基礎になる財産を求算出します。ここでいう一定の条件とは、相続が始まる1年前に贈与した、遺留分権利者に損害を与えると理解して贈与したなどです。このように一定の相続人が特別受益を得ている場合は持ち戻されることになっています。贈与分の加算については民法1044条に記載されています。
例えば、相続財産が4,000万円、贈与財産が500万円、債務が500万円であれば、基礎になる財産は4,000万円になります。
最後に、基礎になる財産に戸籍謄本で確認できる各相続人の遺留分割合をかけて遺留分侵害額を求めます。以上の条件であれば下記、記載のようになります。
【各人の金額】
- 配偶者:4,000万円×1/4=1,000万円
- 長男・長女:4,000万円×1/8=500万円
遺留分侵害額請求はなぜ起こるのか
被相続人が相続人の権利や気持ち、関係を無視した分配方法を遺言で指定することなどで起こります。例えば、可愛がっていた次男にすべての財産を遺贈する、会社を引き継ぐ子どもに運営するための資本をすべて遺贈する、愛人に財産を全て遺贈するなどの指定を行う旨の遺言を作成すると起こる可能性が高くなります。他にも生計をともにしているものの、婚姻関係を結んでいないいわゆる内縁関係の夫・妻に財産をすべて遺す内容とした場合、遺留分のある父母から請求されるケースもあります。
資産を全部、一人に相続させる内容は、遺留分を侵害された一定の相続人が不満に思うからです。遺言を書いておけば必ずしも安心できるというわけではありません。遺留分侵害額請求をされれば、遺言の目的を達成することができなくなるのです。
遺留分侵害額請求は配偶者や子どもなど、相続人が納得できないときに、起こることが多いといえるでしょう。兄弟には遺留分がないため、遺留分侵害額請求が起こることはありません。遺言を作成する際には遺留分を理解し、相続人や家族間で争いが起こらない範囲で不公平にならないように配分を検討する必要があります。遺言がある場合は、原則遺言通りに配分することになりますが、それぞれの事情を考慮して配分を検討するようにしましょう。
遺産相続では双方の主張が食い違うことも多く、さまざまなトラブルが起こります。協議や交渉がまとまらず、自分の主張が受け入れてくれない場合も多いでしょう。場合によっては遺産分割協議が成立せず、相続人間で紛争になり、相続手続きが終わったあとも、話をすることすら難しい状態になるようなこともあります。裁判所に行くまでには至らないまでもぎくしゃくすることもあるでしょう。せっかく良い関係であった親族とも、相続をきっかけに関係が悪化することも多いのです。相続が発生すると突然争いの当事者に巻きこまれる可能性もあるのです。
遺留分権利者であれば、必ず遺留分相当のお金や資産を相手方から受け取ることができます。遺留分侵害額請求をされた相続人は請求を行った相続人に遺留分相当分を支払います。相続人との話し合いで合意に至らない場合でも、制度を利用することで、財産を相続することができますので、簡単に放棄をしないようにしましょう。
円満に解決するため税理士に相談しましょう
いかがでしたでしょうか?今回は、遺留分侵害額請求について解説しました。
被相続人の資産がお金だけでなく、不動産などもある場合は、配分が複雑で短い期間で、全員が納得のいく協議をまとめることは難しいものです。以上の通り、遺留分を侵害された方は、侵害された分に相当する金銭を求められるなどの対応が必要となります。
ただし、相当額を求める計算方法や制度の仕組みは複雑です。円満に相続するため、様々な事項を検討する必要があるため、実績のある税理士に相談してみてはいかがでしょうか。相続を業務として行っている税理士は遺言の書き方や手順、法律上の効力の解説もしてくれます。争いに発展しそうな場合の法律相談は弁護士にするようにしましょう。
費用がかかる場合もありますが、知識のある専門家を活用することで、金融機関の手続きや、不動産の登記手続きも安心して期間内に進めることができ、メリットも大きいです。
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