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相続税の取得費加算の特例を活用して節税につなげるためのポイント

2022年01月24日

相続税は預金、株式、不動産などあらゆる相続財産が課税対象となります。相続する金額が大きいほど、相続税の額も大きくなってしまいます。相続税の額が大きいと、相続税は現金一括で納付する必要があるため、その納税資金の捻出に困る場合もあると思います。

特に、資産の多くが土地や建物など不動産の場合には納税資金の確保や、遺言が無い場合であれば、通常は相続人間で協議して財産を配分する為に売却する必要があるかもしれません。

また、被相続人が生前に住んでいた家も、相続が発生したことで不動産が空き家になり、次に住む人がいないのであれば、管理の問題も出てきます。

そのような相続した不動産を売却して処分することを考慮する時に何か節税したいと考えているのであれば、「取得費加算の特例」を活用してみましょう。相続した不動産を売却し精算する際の売却益に対してかかる負担を軽減できるのが取得費加算の特例です。

「取得費加算の特例がどのようなものか知りたい」と考えている方のため、特例の内容や利用するための条件についてご紹介します。不動産を相続した際に売却するかどうか悩んでいる方も取得費加算の特例やその税務を理解することで、選択の余地が広がります。この記事を読むことにより節税につなげるための概要やポイントがわかるように解説します。

相続税の取得費加算の特例とは

相続税の取得費加算の特例とは、所得税を減らす効果がある特例制度です。相続した財産を一定期間のうちに売却した場合、取得費に相続税の一部を加えることができます。

譲渡所得は「収入金額-(取得費+譲渡費用)」で計算した金額から特別控除を引くことによって計算します。相続を理由に取得した不動産は取得費が不明な場合もあります。取得費が不明な場合や取得費が5%に満たず、5%で計算した方が有利な場合は、売却代金の5%を取得費とすることができますが、利益分が大きくなり、東京など土地の高いエリアであればかなり高い税金を納めることになるでしょう。

取得費加算の特例を活用して取得費の金額が増えれば結果として収入から引かれる金額が大きくなるため、所得税計算上の利益が減り、節税ができるのです。取得費に加算できる金額の計算式は以下の通りとなります。

「譲渡した人が納付する相続税額×譲渡した財産の相続税評価額/(譲渡した人の相続税の課税価格+譲渡した人の債務控除前の債務控除額)」

(簡単な具体例)

・譲渡した人の納付する相続税:500万円

・譲渡した人の相続税の課税価格等:1億円

・譲渡した財産の相続税評価額:2,000万円

取得費加算の金額=500万円×2,000万円/1億円=100万円

様々な求める数値があり複雑そうですが、上記の例の算式で考え方はご理解頂けたでしょうか。相続税として負担した金額を取得費として加算することで一定の節税効果があります。つまり相続税の納税義務者として支払った税金は費用として取得費に加算できると考えると良いでしょう。

後々のトラブルを避けるためにも、自分で計算しようと考えている方は金額を間違えないように注意しましょう。

特例の適用条件

特例の対象として適用してもらうためには、以下の条件を満たしていなければなりません。

適用条件

  • 相続、遺贈によって財産を取得している
  • 財産を取得した人に相続税が課税されている
  • 相続で取得した財産を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡している

特例の適用を受けようと考えている方は、すべての要件を満たしているか確認しておきましょう。

条件を満たしたうえで確定申告をしなければなりません。確定申告をするのが初めての方などは、申告に時間がかかってしまう可能性もあります。確定申告書には相続税に関する計算明細書のほか、譲渡所得の内訳書などの添付が必要です。期限ギリギリになってから慌てて準備すると、時間がかかり、申告期限に間に合わなくなってしまうことがあります。早めに準備を済ませておくことをおすすめします。できれば、売却前に特例の利用と税率を確認し、シミュレーションをしておく方がよいでしょう。

特例を受けられる期間

上記でご紹介した条件の「相続で取得した財産を相続開始翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡している」についての補足です。

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内となります。
そのため、した財産を3年10ヶ月以内に譲り受けた財産を譲渡していることが条件です。

一般的に、相続開始日は被相続人が死亡した日となります。しかし、相続人が死亡を知ったのが死亡から1ヶ月経過した後だったなどのケースもあるでしょう。その場合、売却期限は相続開始日から3年11ヶ月以内です。

相続発生後はなにかと忙しく、3年10か月はあっという間に過ぎてしまいます。この期間内に相続により受ける財産の売却を検討している方は、早めに特例の適用についても確認しておきましょう。

忘れずにしっかり適用を

いかがだったでしょうか。節税のためにも役立てたい取得費加算の特例についてご案内しました。遺産として相続した土地はかなり前に購入されたものであった場合、現在の価値では評価が大きく値上がりし、所得税の負担が大きい場合もあります、取得費加算の特例を利用することで、請求される所得税を減らすことができます。

注意点として、条件を満たしているからといって、何も対応しなくても自動的に節税につながるわけではありません。

適用を受け、負担を軽減するためには、確定申告で申請してください。ただ、取得費加算の特例の計算は複雑です。国税庁のホームページなどにも算出方法は記載されていますが知識のない人が、間違った金額で申請し、税金を支払うことや税務調査で指摘を受けることをを避けるためにも税の専門家である税理士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。初回の相談はサービスで無料で応じてくれる税理士も多いので、書類の書き方や計算の方法など、質問してみるとよいでしょう。

取得費加算のような相続関連の税金については税制改正も頻繁にありますので、相続税や贈与税に申告を普段から業務として行っている税理士事務所・税理士法人に依頼するとよいでしょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい