被相続人の財産の合計が相続発生時点を基準に
基礎控除を超える場合、財産を引き継いだ法定相続人が税金を支払う必要があります。
相続税は預金、株式、不動産、金など被相続人が所有していたあらゆる相続財産が課税対象となります。相続する金額が大きいほど、相続税の額も高額になってしまいます。相続税の額が大きいと、相続税は現金一括で納付する必要があるため、その納税資金の捻出に困る場合もあると思います。納められる現金がない場合は延納や物納、引き継いだ資産の売却活動を行う必要があります。
特に、資産の多くが宅地や上に建っている家屋など不動産の場合には納税資金の確保や、遺言が無い場合であれば、通常は相続人間で協議して財産を配分する為に売却する必要があるかもしれません。
また、被相続人がマイホームとして生前に住んでいた家も、配偶者がいない場合、相続が発生したことで不動産が空き家になり、次に住む人がいないのであれば、管理の問題も出てきます。
そのような相続した自宅などの不動産を売却して処分することを考慮する時に何か節税したいと考えているのであれば、「取得費加算の特例」を活用してみましょう。相続した不動産を売却し精算する際の売却益に対してかかる負担を軽減できるのが取得費加算の特例です。
今回は「取得費加算の特例がどのようなものか知りたい」と考えている方のため、特例の内容や利用するための条件についてご紹介します。不動産を相続した際に売却するかどうか悩んでいる方も取得費加算の特例やその税務を理解することで、選択の余地が広がります。この記事を読むことにより節税につなげるための概要やポイントがわかるように下記に解説しますので参考にしてください。
相続税の取得費加算の特例とは
相続税の取得費加算の特例とは、所得税・住民税を減らす効果がある特例制度です。相続した財産を一定期間のうちに売却した場合、取得費に相続税の一部を加えることができます。
譲渡所得は「収入金額-(取得費+譲渡費用)」で計算した金額から特別控除を引くことによって計算します。譲渡費用の内には仲介手数料なども含まれます。
相続を理由に取得した時点の取得費が不明な場合もあります。自宅の不動産以外にも、賃貸用や事業用として不動産を保有している人もいるでしょう。
取得費が不明な場合や取得費が5%に満たず、5%で計算した方が有利な場合は、売却代金の5%を取得費とすることができますが、利益分が大きくなります。譲渡所得税は固定資産税のように毎年かかるものではありませんが、東京などアクセスがよく土地の値段が高くなっているエリアであれば売却したタイミングで値上がりしている場合、かなり高い税金を納めることになるでしょう。
取得費加算の特例を活用して取得費の金額が増えれば結果として収入から引かれる金額が大きくなるため、所得税計算上の利益が減り、支払う税金を抑えることができるのです。取得費に加算できる金額の計算式は以下の通りとなります。
「譲渡した人が納付する相続税額×譲渡した財産の相続税評価額/(譲渡した人の相続税の課税価格+譲渡した人の債務控除前の債務控除額)」
(簡単な具体例)
・譲渡した人の納付する相続税:500万円
・譲渡した人の相続税の課税価格等:1億円
・譲渡した財産の相続税評価額:2,000万円
取得費加算の金額=500万円×2,000万円/1億円=100万円
様々な求める数値があり複雑そうですが、上記の例の算式で考え方はご理解頂けたでしょうか。相続税として親族が負担した金額を取得費として加算することで一定の節税効果があります。つまり相続税の納税義務者として支払った税金は費用として取得費に加算できると考えると良いでしょう。
後々のトラブルを避けるためにも、自分で計算しようと考えている方は金額を間違えないように注意しましょう。
特例の適用条件
特例の対象として適用してもらうためには、以下の条件を満たしていなければなりません。
適用条件
- 相続、遺贈によって財産を取得している
- 財産を取得した人に相続税が課税されている
- 相続で取得した財産を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡している
特例の適用を受けようと考えている方は、すべての要件を満たすか確認しておきましょう。
条件を満たせていたとしても、確定申告はしなければなりません。確定申告をするのが初めての方などは、資料の作成など申告に時間がかかってしまう可能性もあります。確定申告書には相続税に関する計算明細書のほか、譲渡所得の内訳書などの添付が必要です。期限ギリギリになってから慌てて準備すると、時間がかかり、申告期限に間に合わなくなってしまうことがあります。早めに準備を済ませておくことをおすすめします。できれば、売却前に特例の利用と税率を確認し、シミュレーションをしておく方がよいでしょう。また、代償分割を行った場合、譲渡した財産の相続税評価額には調整の計算が必要となりますので注意しましょう。
特例を受けられる期間
上記でご紹介した条件の「相続で取得した財産を相続開始翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡している」についての補足です。
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内となります。
そのため、相続した財産を3年10ヶ月以内に譲り受けた財産を譲渡していることが条件です。5年以上経過してから売買したケースなど時期を過ぎると利用することができませんので注意しましょう。
一般的に、相続開始日は被相続人が死亡した日となります。しかし、相続人が死亡を知ったのが亡くなってから1ヶ月経過した後だったなどのケースもあるでしょう。その場合、売却期限は相続開始日から3年11ヶ月以内です。
相続発生後は他の手続きもありなにかと忙しく、3年10か月はあっという間に過ぎてしまいます。この期間内に相続により受ける財産の売却を検討している方は、早めに特例の適用についても確認しておきましょう。売却しようとしても、買主を見つけるまでにも時間がかかることがあるので、期限内に契約できないことも多くあります。
空き家の特例を使う場合は併用できない
譲渡所得の取得費加算の特例を利用する場合、被相続人が居住用として利用していた土地・建物などの相続した空き家を売却した場合の最大3,000万円特別控除を利用することはできない課税制度となっています。
3,000万円特別控除を利用することで相続税を0円にできることも多くあります。どちらかを選択して適用することになりますので、納める税金がそれぞれどの程度軽減できるかを比較してどちらの方が税金を減額できて得になるのかよく検証して手続きを進める必要があります。
忘れずにしっかり適用を
いかがだったでしょうか。相続の手続きは忙しい中で相続人同士の調整を始め、金融機関の名義変更や不動産の登記などいろいろな書類を様々なところに提出するなど同時進行で進める必要があり大きな負担となります。何からしていいかわからないということも多いでしょう。
不安がある場合や仕事などで手続きを進めることが難しい場合は司法書士などに手続きを依頼することも可能です。費用はかかりますので、自分の今の状況を説明し、費用を事前に確認してメリットがあるかしっかりと判断してその後で契約するようにしましょう。
節税のためにも役立てたい取得費加算の特例についてご案内しました。遺産として相続した土地はかなり前に購入されたものであった場合、現在の価値では評価が大きく値上がりし、所得税の負担が大きい場合もあります、取得費加算の特例を利用することで、請求される所得税を減らすことができます。特例を活用する際は翌年の所得税の確定申告の際に税務署に書類を提出する必要があります。
注意点として、条件を満たしているからといって、何も対応しなくても自動的に節税につながるわけではありません。
適用を受け、負担を軽減するためには、確定申告で申請してください。ただ、取得費加算の特例の計算は複雑です。国税庁のホームページなどにも算出方法は記載されていますが知識のない人が、間違った金額で申請し、税金を支払うことや税務調査で指摘を受けるリスクを避けるためにも税の専門家である税理士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。実績のある税理士に依頼することでスムーズに手続きを進めることができます。実際に申告を行って誤っていることが判明した場合は修正申告が必要となり、更に負担が大きくなります。
遺産相続の相続税の申告の際も法定相続分か1億6,000万円以上相続する場合を除き、非課税になる配偶者控除や同居の親族など特定の人が自宅用土地を引き継いだ時などに使うことができる小規模宅地の特例など、非常の大きな影響がある特例もあります。小規模宅地の特例は特に東京や大阪など、価格の高いエリアの場合効果も大きくなり、大きく税負担を減らすことができますので、忘れずに適用することが大切です。
初回の相談はサービスで無料で応じてくれる税理士も多いので、書類の書き方や計算の方法など、気になることをまとめて質問してみるとよいでしょう。
取得費加算のような相続関連の税金については税制改正や制度の変更も頻繁にあります。将来のために贈与など生前の相続対策についても相談することができますので、相続税や贈与税に申告を普段から業務として行っている税理士事務所・税理士法人に依頼することで安心して手続きを進めることができます。税理士に生前に各種相続対策のアドバイスを受けることも可能です。誰が何を相続するか財産の分け方を指定するための遺言書の作成や生前贈与など、事前に対策する部分について相談してみてもよいでしょう。
広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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