所有している株式や不動産を取引した際に購入した際の価額よりも所有している間に値上がりし、利益が出た場合、利益に対して税金がかかります。譲渡をしていないにもかかわらず、譲渡したものとみなして課税されるみなし譲渡という制度をご存じでしょうか。
今回はみなし譲渡の概要について、わかりやすく解説していきます。
みなし譲渡とは
みなし譲渡とは実際に売買したわけではないにも関わらず譲渡をしたものとして所得税や消費税が課税される制度です。みなし譲渡は個人から法人に相続財産として亡くなった際に遺贈をした場合や譲渡をした場合などに適用されます。
法人は個人と違い永続的に存在することが可能です。実際に数百年以上、存続し続けている企業はたくさんあります。
そのため、個人が持っている不動産が値上がりした場合、関係のある法人に現在の時価よりも著しく低い価格で財産を移転を行い、永遠に課税を繰り延べることが可能となり、実質的に税金を回避できてしまいます。
原則、譲渡所得は、売却した際に課される税金ですが、自分が経営している法人を活用して永遠に譲渡所得が課税されないようなケースを防ぐために、みなし譲渡の制度によって、本来は譲渡していないにも関わらず、税法上は一度譲渡したものとみなして所得税を課税するルールとなっています。
みなし譲渡の制度はどのような場合に適用されるのか、具体的な例を交えて解説していきます。
みなし譲渡により所得税の課税対象となるケース
みなし譲渡により所得税の課税対象となるケースを確認していきましょう。
個人から法人に無償で譲渡した場合
個人から法人に対価を支払わずに無償で譲渡(贈与)行う場合、みなし譲渡があったものとして所得税の課税対象となります。例えば、会社の役員が法人に時価3,000万円の土地・建物を譲渡したとしましょう。Aが取得した際の土地・建物の金額が2,000万円であった場合、1,000万円(3,000万円-2,000万円)の差額について譲渡益があり、受け取ったものとみなされて譲渡益の額が所得税の課税対象となります。個人から個人へ贈与した場合は贈与税の対象となりますが、法人に無償で財産を譲渡した場合は、その時点の時価で売却したものとみなし、税金がかかるということを覚えておきましょう。
個人から法人に低額で譲渡した場合
個人から法人に時価の半分以下の価格で譲渡した場合も所得税の課税対象となります。例えば、会社の役員が時価3,000万円の土地建物を1,000万円で法人に売却したケースなどが考えられます。時価の半分以下など著しく低い価格で譲渡を受けた場合には、譲渡した場合と同じく、時価3,000万円で売却したものとみなされます。そのため、取得価格が2,000万円の場合、1,000万円(3,000万円-2,000万円)の譲渡益があったものとみなされて譲渡益の額が所得税の課税対象となり、納税義務が生じるということを覚えておきましょう。
限定承認で遺産を相続した場合
限定承認とは被相続人の資産の中で負債などの消極財産があった場合に、被相続人の積極財産を限度に相続する制度です。限定承認を選択して相続した場合、相続が発生した日を資産を譲渡した日とみなして譲渡所得を計算します。
譲渡所得の納税義務は相続人が引き継ぎ、相続税とは別に相続人が支払うことになります。ただし、譲渡所得税が加わることによって被相続人の積極財産を上回る場合、相続人はみなし譲渡所得を負担する必要はありません。みなし譲渡所得の納税期限は相続税の10カ月よりも短く、4ヶ月以内に納税する必要があります。申告を怠った場合、税務署から請求されてますので、注意が必要です。
みなし譲渡により消費税の課税対象となるケース
みなし譲渡では消費税の課税対象となるケースもあります。消費税の課税対象となるケースについて説明します。
法人から役員へ無償で譲渡した場合
法人から役員へ不動産等の資産を無償で譲渡した場合、みなし譲渡として消費税の課税対象となります。譲渡した資産が棚卸資産であった場合、販売価格の50%または仕入れ価格のいずれか高い方の金額で譲渡をしたものとみなされて消費税の対象となります。
棚卸資産以外の場合は譲渡時の時価で譲渡したものとして消費税が課されます。
法人から役員に低額で譲渡した場合
法人から時価の半分以下の価格で譲渡した場合もみなし譲渡として、消費税が課されます。消費税の課税標準として加えられる金額は、棚卸資産である場合、通常の販売価格。譲渡した資産が棚卸資産ではない場合、棚卸資産の時価となります。
みなし譲渡の計算は税理士に相談を
みなし譲渡の制度の内容や計算は非常に複雑です。書籍も売られていますが、税制度の知識のない人が理解するのは難しい制度です。譲渡の対象となる財産の取引をしたときの価格がわかるもの等、様々な資料を集める必要があります。
限定承認の場合などは葬儀や相続の手続きなどもあり、確定申告までの期限である4ヶ月という期間はあっという間に時間が過ぎてしまうでしょう。自分が経営している法人との資産のやり取りは今後の事業承継にも関連する重要な判断です。税務上の問題点がないかもしっかり検証を行って、税理士の提案を受けて判断する必要があるでしょう。
税理士に依頼することで費用はかかりますが、誤った申告をすると、加算税を課される可能性がありますので、しっかりと申告をした方が得になることも多いです。業務としてさまざまな事例に対応している税理士からしっかりとした案内を受けて、安心して手続きを進めることをおすすめします。
みなし譲渡の計算をする際は税の専門家である税理士に相談する方がよいでしょう。サービスで無料相談に応じてくれる税理士もいますので、まずは相談してみてもよいでしょう。
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