自分の相続を考える際に、家族構成は非常に重要となります。一般的に、子どもが1人の場合、相続の配分で争いになることは少ないでしょう。しかし、一人っ子の世帯だからこそ考えるべきこともあります。
当記事では子どもが一人の場合の相続について解説します。
一人っ子世帯の相続とは?基本的な考え方
一人っ子世帯の相続とは、亡くなった人(被相続人)に子どもが1人しかいない場合に発生する相続のことです。
相続人の人数が少ないため、複雑な争いは起きにくいと考えられがちですが、配偶者の生活確保や不動産の扱い、二次相続の税負担など、重要なポイントがあります。
特に重要なのは次の2点です。
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配偶者の生活を守る分配になっているか
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将来の二次相続(配偶者死亡後)まで見据えているか
相続は「財産の分配」だけでなく、残された家族の生活設計に直結する問題です。
一人っ子世帯で相続が発生する典型的なケース
一人っ子世帯の相続は、次のようなケースで発生します。
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親が亡くなり、配偶者(母または父)と子1人が残る
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配偶者が既に死亡しており、子1人が相続する
特に多いのは、配偶者と子1人が相続人になるケースです。
相続人になる人の優先順位(配偶者・子・直系尊属)
民法では、相続人の優先順位が決められています。
■常に相続人になる人
■優先順位
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子(第一順位)
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親・祖父母(直系尊属)(第二順位)
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兄弟姉妹(第三順位)
つまり、
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子がいる → 親や兄弟姉妹は相続しない
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子がいない → 親が相続人になる
という仕組みです。
配偶者と子どもがいる場合の法定相続分
被相続人に配偶者と子どもがいる場合、法定相続分は次の通りです。
子どもが複数いる場合は、子の取り分を人数で分けますが、一人っ子の場合は子が全額1/2を取得します。
法定相続分の基本ルール
法定相続分とは、法律で定められた遺産の取り分の目安です。
ただし、
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必ずこの割合で分けなければならないわけではない
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相続人全員の合意があれば自由に分配できる
という点が重要です。
法定相続分は「公平な基準」であり、実際の分配は家族の事情に合わせて決めることができます。
配偶者1/2・子1/2の分け方の仕組み
この割合は、次の考え方に基づいています。
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配偶者:生活維持のための保障
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子ども:次世代への財産承継
たとえば遺産が4,000万円の場合:
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配偶者 → 2,000万円
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子 → 2,000万円
となります。
遺産分割協議による分配変更は可能
相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる分配も可能です。
例えば:
✔ 配偶者が自宅を取得し、子は預貯金を取得
✔ 配偶者が多めに相続して生活資金を確保
✔ 子が相続を控え、配偶者の生活を優先
ただし、トラブル防止のためにも書面(遺産分割協議書)の作成が重要です。
一人っ子世帯の相続関係を理解する
相続関係を整理すると理解しやすくなります。
■配偶者+子どもがいる場合
→ 配偶者と子が相続人
■子がいない場合
→ 配偶者と親(直系尊属)が相続人
■配偶者がいない場合
→ 子が単独で相続
配偶者+子ども1人の場合
最も一般的なケースです。
生活の拠点である自宅の扱いが重要なポイントになります。
配偶者のみ(子がいない場合)
子どもがいない場合:
親が既に亡くなっている場合、配偶者が全額相続します。
子のみ(配偶者がいない場合)
配偶者がいない場合、子がすべての財産を相続します。
一人っ子であれば、遺産は全額取得します。
具体例で見る相続割合の計算方法
実際の遺産分割は財産の内容によって変わります。
によって分配方法を検討する必要があります。
遺産総額3,000万円の場合
配偶者と子1人の場合:
ただし、自宅が含まれる場合は現金との調整が必要です。
不動産が中心の場合の分け方
自宅の評価額が大きい場合、
✔ 配偶者が自宅を相続
✔ 子が預貯金を取得
✔ 代償金を支払って公平に分配
などの方法が検討されます。
また、配偶者居住権の活用も有効です。
預貯金・生命保険があるケース
生命保険金は受取人固有の財産となるため、遺産分割の対象外です。
そのため:
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配偶者を受取人にして生活資金を確保
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遺産分割のバランスを調整
といった活用が可能です。
配偶者が安心して暮らすために知っておきたい制度
相続では、配偶者が生活の基盤を失わないようにすることが重要です。
法律や税制には、配偶者の生活を守るための制度が用意されています。
代表的な制度は次の3つです。
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配偶者居住権
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配偶者の税額軽減
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小規模宅地等の特例
これらを適切に活用することで、住まいと生活資金の両方を守ることができます。
配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、相続開始時に住んでいた自宅に、配偶者がそのまま住み続けられる権利です。
■制度のポイント
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自宅の所有権を子に渡しても住み続けられる
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終身または一定期間の居住が可能
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節税が可能
配偶者居住権は自宅の価値を「居住権」と「敷地所有権」に分けることで、配偶者が住む権利を確保しつつ、他の預貯金をより多く相続しやすくなる(生活資金を残せる)メリットがあります。また、二次相続時の節税につながる場合もあります。
■活用例
自宅の所有権 → 子
居住権 → 配偶者
このように分けることで、配偶者の住まいを守りつつ円滑な相続が可能になります。
配偶者の税額軽減の特例
配偶者の税額軽減の特例
配偶者が相続する財産については、大幅な相続税の軽減措置があります。
■軽減の範囲
以下のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。
例えば、配偶者が1億円を相続しても、税金はかからない可能性があります。
■注意点
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遺産分割が完了している必要がある
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申告期限内に手続きが必要
配偶者の生活資金を守るうえで非常に重要な制度です。
小規模宅地等の特例の活用
自宅の土地は評価額が高くなりやすいですが、この特例を使うと相続税評価額を大幅に減額できます。
■減額割合
■適用条件(主なもの)
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配偶者が相続する
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同居していた親族が相続する
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相続後も居住を継続する
この特例により、自宅を守りながら税負担を軽減できます。
不動産の分割が難しいケース
遺産の大半が自宅などの不動産の場合、次の問題が生じやすくなります。
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現金のように分割できない
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評価額の算定が難しい
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売却の是非で意見が分かれる
■主な解決方法
✔ 配偶者が自宅を相続
✔ 子へ代償金を支払う
✔ 売却して現金化
✔ 配偶者居住権の活用
配偶者と子の意見が対立する場合
一人っ子世帯でも、次のような対立が起こることがあります。
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配偶者は住み続けたい
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子は売却して資産整理したい
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相続割合に不満がある
感情的対立を防ぐためには、
ことが重要です。
二次相続で税負担が増える可能性
二次相続とは、配偶者が亡くなった後に子が相続することを指します。
一次相続で配偶者に多くの財産を集中させると、
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配偶者死亡時に基礎控除が減る
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相続人が子1人のみになる
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相続税が高額になる可能性
があります。
そのため、一次相続の段階で二次相続まで考慮することが重要です。
トラブルを防ぐための生前対策
相続トラブルの多くは「準備不足」が原因です。
次の対策を行うことで、家族の負担を軽減できます。
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遺言書の作成
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財産内容の整理
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家族との意思共有
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専門家への相談
遺言書の作成で意思を明確にする
遺言書があれば、被相続人の意思に基づいた分配が可能になります。
■メリット
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遺産分割協議が不要になる
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家族間の争いを防げる
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配偶者の生活を優先できる
特に不動産がある場合は重要です。
配偶者の生活資金を確保する方法
配偶者が安心して暮らすためには、生活資金の確保が不可欠です。
■有効な方法
✔ 預貯金を多めに配分する
✔ 生命保険を活用する
✔ 年金・収入状況を確認する
✔ 自宅維持費を考慮する
生命保険は迅速に受け取れるため、生活資金対策として有効です。
二次相続を見据えた財産分配の考え方
一次相続の分配次第で、将来の税負担は大きく変わります。
■ポイント
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配偶者に集中させすぎない
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子にも一定割合を相続させる
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不動産の共有は避ける
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納税資金を確保する
「配偶者の安心」と「次世代の負担軽減」のバランスが重要です。
相続手続きで見落としやすいポイントと注意点
一人っ子世帯の相続は相続人の数が少ないため手続きが簡単に思われがちですが、実際には相続財産の確認や登記手続き、税務対応など、注意すべき点が多くあります。
特に次の事項は、事前に把握しておくことが重要です。
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相続財産の全体像の調査
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不動産の登記手続き
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相続税・贈与税の対象確認
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必要書類の収集
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手続き期限への対応
相続財産の調査と把握の重要性
相続では、まず被相続人の財産内容を正確に調査する必要があります。
■確認する主な財産
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預貯金
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不動産
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有価証券
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保険金
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借入金などの債務
通帳以外の口座や、名義が両親のままの不動産などが見つかることもあるため注意が必要です。
また、相続財産に含まれないもの(受取人指定の生命保険金など)との違いも理解しておきましょう。
不動産の登記手続きと法務局での対応
不動産を引き継ぐ場合、相続登記が必要です。
■登記のポイント
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相続により取得した不動産は名義変更が必要
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法務局へ申請する
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遺産分割協議書などの書類が必要
2024年から相続登記は義務化され、
相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
正当な理由なく、期限を過ぎると10万円以下の過料のリスクがあるため注意しましょう。
相続税・贈与税との関係に注意
相続時には相続税だけでなく、過去の贈与も影響する場合があります。
■確認が必要なケース
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生前贈与を受けていた場合
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相続開始前一定期間以内の贈与
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名義預金と判断されるリスク
暦年贈与の場合、相続発生直前の贈与は相続税の課税対象となります。
2024年の法改正により、相続開始前3年以内から7年以内と延長されており、生前贈与の時期によっては相続財産に加算されることがありますので注意が必要です。
生前贈与を活用する際のポイント
配偶者や子へ財産を移転する方法として、生前贈与の活用が検討されます。
■メリット
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将来の相続財産を減らせる
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配偶者の生活資金を事前に確保できる
■注意点
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贈与契約書を作成する
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通帳管理を本人が行う
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税務上の否認リスクを避ける
適切な手続きを行わないと贈与として認められない可能性があります。
遺言書の有無で手続きは大きく変わる
遺言書がある場合とない場合では、手続きの負担が大きく異なります。
■遺言書がある場合
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原則として遺言内容に従って相続
- 全員で協議のうえ遺言とは異なる配分で相続
自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、家庭裁判所での「検認」が必要です。 ただし、「法務局の遺言書保管制度」を利用した場合や、公証役場で作成する「公正証書遺言」の場合は、検認手続きが不要で、すぐに名義変更などの手続きに進めます。
■遺言書がない場合
なお、自筆証書遺言は法務局の保管制度を利用することで検認が不要になります。
孫が関係する相続のケース
通常、一人っ子世帯では孫は相続人になりません。
しかし、次のような場合は例外となります。
この場合、孫が相続人として財産を引き継ぐことになります。
手続き期限と早めの対応の重要性
相続手続きには期限があります。
■主な期限
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相続税申告:10か月以内
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相続放棄:3か月以内
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相続登記:3年以内
期限を過ぎると不利益が生じる可能性があるため、早めの対応が重要です。
事前準備が家族の負担とリスクを減らす
相続が発生してから慌てないためにも、事前の準備が重要です。
■事前にできること
✔ 財産の一覧を作成する
✔ 登記情報や重要書類を整理する
✔ 家族へ意思を共有する
✔ 専門家へ気軽に相談する
準備の有無によって、手続きの負担やトラブルのリスクは大きく変わります。
まとめ|一人っ子世帯の相続は「配偶者の安心」と「将来設計」が重要
一人っ子世帯の相続は相続人が少ないためシンプルに見えますが、
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配偶者の住まいと生活の確保
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不動産の扱い
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二次相続の税負担
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家族間の意見調整
といった重要なポイントがあります。
特に重要なのは、
✔ 配偶者が安心して暮らせること
✔ 子ども世代の負担を軽減すること
✔ 生前から準備を進めること
です。
早めの対策と家族での話し合いが、円満な相続につながります。
不安な点がある場合は専門家に相談することも重要です。広島相続税相談テラスでは、初回の相談無料でさまざまなご相談に対応しております。ぜひお気軽のご相談ください。