相続税の申告では被相続人が亡くなった時点の預貯金残高だけでなく、過去の入出金や資金移動について確認が必要になるケースが珍しくありません。
相続を行った方の中には、「通帳は過去何年分必要なのか」「古い通帳が残っていない場合はどうすればよいのか」と不安になる方もいるでしょう。
相続税申告のために用意する通帳の期間について、法律上「何年分必要」という明確な決まりはありません。
ただし、生前贈与や名義預金、多額の現金の引き出しなどを把握するため、過去の取引履歴を確認する場合もあります。
可能であれば、過去10年分程度の通帳や取引履歴を用意しておくと安心です。
この記事では、相続税申告に必要な通帳の期間の目安や、税務署が確認するポイント、通帳がない場合の対応方法などを解説します。
相続税申告に必要な通帳は何年分?
相続税申告に必要な通帳について、「過去5年分」「7年分」「10年分」など、さまざまな意見があります。
しかし、相続税の申告に際して、被相続人の通帳を一律に何年分用意しなければならないという明確な決まりはありません。
実際に確認が必要な期間は、被相続人や家族の財産・資産の状況、預貯金の動きなどによって異なります。
たとえば、亡くなる直前に多額の出金があった場合、そのお金が何に利用されたのか確認が必要です。
また、被相続人の口座から相続人や家族名義の口座へ多額の振込があれば、生前贈与や名義預金などの可能性も検討する必要があります。
そのため、相続税申告の準備では、少なくとも過去5年程度を確認し、可能であれば10年分程度の通帳や取引履歴を用意しておくと安心です。
7年分という情報を見かける理由
相続税について調べると「7年」という期間が出てくることがあります。
これは、主に暦年課税による生前贈与の加算対象期間が、税制改正によって相続開始前3年以内から7年以内へ延長されたためです。
ただし、「生前贈与の加算対象期間が最長7年」と「相続税申告のために通帳を7年分用意しなければならない」は別の話なので、混同しないように気を付けましょう。
また、生前贈与の加算対象期間は段階的に延長されます。
2026年12月31日までに相続が開始したケースでは、加算対象期間は相続開始前3年以内です。
2027年1月1日から2030年12月31日までに相続が開始した場合は、2024年1月1日から相続開始日までが対象となり、2031年1月1日以降に開始した相続から相続開始前7年以内となります。
そのため、単純に「7年分あれば問題ない」と判断するのではなく、それぞれの相続の状況に応じて必要な期間を確認することが重要です。
相続税申告で過去の通帳を確認する理由
相続税の計算では、被相続人が亡くなった時点で存在する相続財産を正確に把握する必要があります。
しかし、死亡時点の預金残高だけを見ても、すべての財産を把握できるとは限りません。
過去の通帳や取引履歴には、預貯金以外の相続財産や生前贈与などを把握する手がかりが残っていることがあります。
相続税の申告漏れを防ぐためにも、過去の資金の動きを確認しておくことが大切です。
生前贈与の有無を確認する
被相続人から相続人などへ生前に財産を贈与している場合、一定の条件に該当すると、その財産の価額を相続税の課税価格に加算して税額を計算する必要があります。
たとえば、被相続人の口座から子どもや孫などの口座へ多額の資金が移動していれば、贈与と判断され、贈与税の納付が必要です。
過去の通帳を確認することで、「いつ」「誰に」「いくら」資金が移動したのかが把握しやすくなります。
贈与税の申告状況などもあわせて確認するとよいでしょう。
名義預金がないか確認する
相続税申告では、名義預金にも注意が必要です。
名義預金とは、口座の名義人と、実際にその預金を管理していた人が異なる預金のことです。
たとえば、親が子ども名義の口座を作成して自分のお金を入金し、通帳や印鑑も親自身が管理していたケースなどがあります。
口座の名義だけを見て「子どもの財産」と判断すると、相続財産の申告漏れにつながる可能性があります。
被相続人だけでなく、家族名義の預金についても資金の出どころや管理状況を確認することが重要です。
多額の出金や使途不明金を確認する
亡くなる前に多額の現金が引き出されている場合、その資金の使い道についても確認しておきましょう。
入院費や生活費、医療費などとして支払いに利用していれば問題ありませんが、引き出した現金が死亡時点でも自宅などに残っていた場合は、現金として相続財産に含める必要があります。
また、不動産や有価証券などの購入に利用していれば、その資産が相続財産になるケースもあります。
高額な出金がある場合は、領収書や契約書などの書類・資料も確認し、何に使ったお金なのか説明できるようにしておくことが大切です。
預貯金以外の財産を確認する
通帳の履歴から、預貯金以外の財産の存在がわかるケースもあります。
たとえば、証券会社から配当金が入金されていれば株式などを保有していた可能性があり、保険会社への継続的な支払いがあれば生命保険をかけている場合もあるでしょう。
また、不動産会社などから定期的に入金があれば、家賃収入が発生している可能性もあります。
相続財産を正確に把握するためには、預金残高だけでなく、入出金の相手や内容まで確認することがポイントです。
過去の通帳がない場合はどうする?
「10年分確認したいけれど、古い通帳を処分してしまった」というケースもあるでしょう。
手元に通帳がない場合は、口座のある金融機関に依頼して、過去の取引履歴や入出金明細などを取得する方法があります。
取得できる期間や手続き、必要書類、発行にかかる費用などは金融機関によって異なるため、事前に確認しましょう。
取引履歴は、相続税申告の内容を確認するための資料になるだけでなく、過去の資金移動や預金残高を証明する資料として役立つ場合もあります。
取得できる期間は銀行によって異なるため、必要な期間の履歴が残っているか早めにチェックしておきましょう。
また、相続人が被相続人の取引履歴を取得する際には、被相続人が亡くなったことや、請求者が相続人であることを証明する戸籍などの書類を求められる場合があります。
相続税の申告期限直前になってから取引履歴を依頼すると、書類の取得が間に合わない可能性もあります。
相続税申告が必要になりそうな場合は、早めに金融機関へ問い合わせて準備を進めましょう。
相続税の税務調査では通帳の何を見られる?
相続税の税務調査では、申告された財産や税額が正確かどうか確認されます。
その際、預金口座の残高だけでなく、過去の入出金履歴や家族間の資金移動などが調査の対象になることがあります。
特に注意したいのが、多額の現金の引き出し、家族名義の口座への振込、生前贈与と疑われる資金移動などです。
相続人が把握していなかった預貯金や相続財産が見つかれば、相続税の修正申告や追加の税金が発生するケースもあります。
「古い取引だから確認されないだろう」と判断するのではなく、疑問のある入出金については、事前に内容を調べておくことが重要です。
通帳を確認するときの注意点
相続税申告のために通帳を調べる際は、単に残高を見るだけではなく、資金の流れを確認することが重要です。
確認する内容を一覧にしてチェックしておくと、複数の銀行口座がある場合でも申告に必要な情報を整理しやすくなるでしょう。
まず、被相続人が利用していた金融機関と口座を一覧にして、亡くなった時点の残高を確認します。
その上で過去の履歴を調べ、多額の入出金や家族への資金移動などがないか確認しましょう。
ネット銀行など紙の通帳が発行されない口座にも注意が必要です。
郵便物やメール、スマートフォン、過去の振込履歴などから口座の存在がわかることもあります。
また、通帳だけでは資金の移動理由がわからないこともあります。領収書、契約書、贈与契約書など、取引内容を説明できる資料があれば一緒に保管しておくと安心です。
相続税の通帳確認で迷ったら税理士に相談する
相続財産が多い場合や、生前贈与、名義預金、多額の出金などがある場合は、自分だけで相続税を正確に計算することが難しいケースがあります。
特に「この預金は誰の財産なのか」「過去の贈与を相続財産に加算する必要があるのか」「どの程度まで取引履歴を調べるべきか」といった判断には、相続税に関する専門知識が必要です。
疑問がある場合は、相続税に詳しい税理士や税理士法人への相談を検討しましょう。
無料相談を行っている税理士事務所や税理士法人もあるため、相談できる内容や費用、依頼した場合の手続きなどを事前に確認した上で利用する方法もあります。
税務調査や申告漏れへの不安がある場合も、申告前の段階で専門家に確認しておくことで、適切な対応を取りやすくなります。
まとめ
相続税申告に必要な通帳について、法律上「過去何年分を用意する」という明確な決まりはありません。
ただし、相続財産や生前贈与、名義預金、多額の引き出しなどを正確に把握するためには、過去の取引履歴を確認する必要があります。
少なくとも過去5年程度を確認し、可能であれば10年分程度の通帳や取引履歴を用意しておくと安心です。
古い通帳が残っていない場合は、金融機関から取引履歴や明細を取得できる場合もあります。
相続税の申告では、死亡時点の預金残高だけでは判断できない財産や資金移動もあります。
早めに資料を準備し、判断に迷う取引がある場合は税理士などの専門家へ相談しましょう。