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相続税における障害者控除とは?いくら減る?誰が使える?

2026年02月06日

目次

相続税における障害者控除とは?

相続税における障害者控除とは、相続人が障害者である場合に、一定額を相続税額から直接差し引くことができる制度です。
所得控除のように課税価格を減らすのではなく、計算された相続税額そのものを減額できる点が大きな特徴です。

障害のある方は、将来にわたって医療費や生活支援費用がかかる可能性が高いことから、相続税の負担を軽減するためにこの制度が設けられています。

障害者控除が設けられている理由

障害者控除の背景には、次のような考え方があります。

  • 障害のある方は、将来の生活費・医療費の負担が大きい

  • 相続財産は、将来の生活を支える重要な資金となる

  • 相続税によって生活基盤が損なわれることを防ぐ必要がある

このため、障害者が相続人となった場合には、相続税を軽減し、生活の安定を図るという福祉的な配慮が制度化されています。

他の相続税控除との違い

障害者控除は、次の点で他の控除と異なります。

  • 相続税額から直接控除できる(基礎控除などは課税価格から控除)

  • 相続人本人の属性(障害の有無)によって適用される

  • 控除額が年齢によって変動する

つまり、適用できれば節税効果が非常に大きい控除といえます。

障害者控除で相続税はいくら減る?

障害者控除による減税額は、障害の区分と相続開始時の年齢によって決まります。

控除額の計算方法(基本ルール)

障害者控除の控除額は、次の計算式で求めます。

  • 一般障害者
     (85歳 - 相続開始時の年齢)× 10万円

  • 特別障害者
     (85歳 - 相続開始時の年齢)× 20万円

※1年未満の端数は切り上げて計算します。

一般障害者と特別障害者の控除額の違い

障害者控除では、障害の程度により区分が分かれます。

  • 一般障害者:身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳などで一定等級に該当

  • 特別障害者:重度障害(重度身体障害者、重度知的障害者など)

特別障害者の場合は、一般障害者の2倍の控除額が認められるため、相続税が大きく軽減されるケースも少なくありません。

控除額の早見表(年齢別)

例として、相続開始時の年齢別の控除額は次のとおりです。

  • 50歳
     一般障害者:350万円
     特別障害者:700万円

  • 60歳
     一般障害者:250万円
     特別障害者:500万円

  • 70歳
     一般障害者:150万円
     特別障害者:300万円

年齢が若いほど、控除額が大きくなるのが特徴です。

具体的な計算例で見る障害者控除

実際の相続税計算に当てはめて見てみましょう。

相続税がかかるケースの計算例

相続税額が300万円と計算された場合で、
相続人が60歳の特別障害者だったとします。

  • 障害者控除額:500万円

  • 相続税額:300万円

この場合、障害者控除を適用すると相続税は0円になります。

障害者控除によって相続税が0円になるケース

障害者控除は、相続税額を上限として控除されます。
そのため、

  • 控除額 > 相続税額

となる場合は、相続税が全額免除されます。
なお、控除しきれなかった金額は還付や繰越はできません。

複数の相続人がいる場合の考え方

複数の相続人がいる場合でも、

  • 障害者控除は、障害者本人の相続税額から控除

されます。
他の相続人の税額が減るわけではない点に注意が必要です。

障害者控除は誰が使える?適用条件を整理

障害者控除を受けるには、いくつかの要件を満たす必要があります。

控除を受けられる「障害者」の定義

相続税法上の障害者とは、次のいずれかに該当する人です。

  • 身体障害者手帳の交付を受けている人

  • 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人

  • 知的障害があると判定されている人

障害者手帳の等級によって、一般障害者か特別障害者かが判断されます。

相続人であることが条件になる理由

障害者控除は、相続人に対する税の軽減措置です。
そのため、

  • 受遺者(遺贈のみを受けた人)

  • 相続放棄をした人

は、原則として対象になりません。

年齢要件(何歳まで適用される?)

障害者控除は、相続開始時に85歳未満であることが条件です。
85歳以上の場合は、控除額が0となるため適用できません。

障害者控除が使えない・注意が必要なケース

障害者控除は非常に有利な制度ですが、すべてのケースで使えるわけではありません
ここでは、誤解されやすいポイントを整理します。

相続人以外が障害者の場合

障害者控除は、相続人が障害者であることが要件です。

そのため、次のようなケースでは適用できません。

  • 障害者が「受遺者(遺贈のみを受けた人)」の場合

  • 障害者が法定相続人ではない場合

「障害のある家族が財産を受け取った=必ず控除できる」
というわけではない点に注意が必要です。

障害者手帳がない場合は使える?

原則として、相続開始時点で障害者に該当していることを客観的に証明できるかがポイントになります。

  • 身体障害者手帳

  • 精神障害者保健福祉手帳

  • 療育手帳(知的障害)

などが一般的な判断材料です。

手帳がない場合でも、医師の診断書等により実質的に障害者と認められる可能性はありますが、
税務署との判断が分かれやすいため、事前に専門家へ相談するのが安全です。

相続税がもともとかからない場合

障害者控除は、算出された相続税額から差し引く制度です。

そのため、

  • 基礎控除だけで相続税が0円

  • 配偶者控除により相続税がかからない

といったケースでは、障害者控除を使う場面がありません
控除額が残っていても、還付や繰越はできない点に注意しましょう。

障害者控除を受けるための手続きと必要書類

障害者控除は、自動的に適用される制度ではありません
相続税申告の中で、正しく主張・証明する必要があります。

相続税申告での記載方法

障害者控除は、相続税申告書の

  • 第1表(税額計算欄)

  • 障害者控除の内訳書

などに記載して適用します。

控除額の計算根拠(年齢・障害区分)を明確に記載することが重要です。

提出が必要な書類一覧

一般的に、次の書類が必要になります。

  • 相続税申告書一式

  • 障害者手帳の写し

  • 被相続人の死亡日が分かる戸籍謄本

  • 相続人の戸籍謄本

ケースによっては、診断書や追加資料を求められることもあります。

税務署に確認されやすいポイント

税務署が特に確認しやすいのは、次の点です。

  • 相続開始日時点で障害者に該当しているか

  • 一般障害者か特別障害者かの区分

  • 年齢計算に誤りがないか

「なんとなく使えると思った」という申告は否認されやすいため、
証拠書類と計算根拠を明確にすることが重要です。

障害者控除と併せて検討したい相続税対策

障害者控除は、他の控除制度と併用できる点も大きなメリットです。

未成年者控除との関係

相続人が

  • 未成年

  • かつ障害者

である場合、未成年者控除と障害者控除の両方を適用できます。

どちらも税額控除のため、相続税が大きく減額される可能性があります。

配偶者控除・基礎控除との併用

障害者控除は、

  • 基礎控除

  • 配偶者控除

併用可能です。

まず課税価格を抑え、
そのうえで障害者控除を使うことで、相続税が0円になるケースも珍しくありません。

生前対策で注意すべきポイント

生前贈与を検討する場合は、次の点に注意が必要です。

  • 相続人でなくなると障害者控除が使えない

  • 贈与税には障害者控除はない

  • 遺言内容によって相続人から外れる可能性

障害者控除を前提にした相続設計は、遺言書の内容確認が不可欠です。

障害者控除の取得と扶養義務者・家族関係の整理

障害者控除を取得(適用)するためには、相続人が単に障害者であるだけでなく、「扶養義務者としての位置づけ」や、**親族関係(血族・直系・兄弟姉妹など)**がどうなるかを意識することが重要です。

相続税法は、「相続人であること」を前提として控除を認めていますが、たとえば 扶養義務者である配偶者や子ども、あるいは 兄弟姉妹の中で生活の実態がある場合でも、控除の適用要件にズレが生じると申請が認められないことがあります。

また、扶養義務者として生活を支えてきた実績があるかどうかは、税務署による判断材料となることがあるため、居住実態・支援の有無・過去の生活状況なども整理しておきましょう。

控除適用の範囲と「日本国内」での住所要件

障害者控除の対象となるには、相続人が日本国内に住所を有していることが重要です。
海外居住の相続人や、申請時点で国外に居住しているケースは、控除の適用範囲が限定される可能性があります。

そのため、申請前には必ず「どこに居住しているか」「日本国内に課税関係があるか」を確認し、必要に応じて税務署や専門家の対応を受けるべきです。

申請手続きと添付書類の参考ポイント

障害者控除を正しく受けるためには、申請書類の添付書類の準備が肝要です。
障害者手帳(1級・2級・該当等級の証明)、戸籍、住民票などだけでなく、

  • 生計を一にしていた証拠

  • 居住実績に関する資料

  • 扶養関係や支援実績のメモ

など、税務署が確認しやすい資料をあわせて添付することが推奨されます。
不備があると、「申請不要と誤解されて控除が認められない」といった事態も発生するため、早めの準備とチェックリスト化が役立ちます。

配偶者控除との比較・特例との関係

障害者控除は、配偶者控除や未成年者控除と併用できるケースが大半です。
しかし制度ごとに適用条件や範囲が異なるため、

  • どの控除が優先されるのか

  • 併用した場合の税負担の変化

  • それぞれの申告書類の添付要件

などの整理が必要になります。これは、とくに税務計算が複雑になるケースで重要です。

専門家の支援を受けるメリット

障害者控除は制度自体が分かりやすく見えて、適用漏れや誤適用が起きやすい制度でもあります。
以下のようなケースでは、税理士・相続専門家による支援を受けることでトラブルを未然に防げます。

  • 過去に贈与がある場合

  • 扶養関係・居住関係が複雑な場合

  • 障害区分の判定が微妙な場合

  • 親族間の調整が必要な場合

専門家に相談することで、「控除の取得 → 申請 → 税務署対応」までの一連の流れを効率的に進められるだけでなく、相続全体の税負担を最小化する設計にもつながります。

よくある質問(FAQ)

障害者控除は遡って適用できますか?

相続税申告期限(原則10か月)内であれば可能です。
期限後の場合でも、更正の請求により適用できるケースがあります。

途中で障害認定を受けた場合は?

原則として、相続開始時点で障害者に該当していることが必要です。
相続後に障害認定を受けた場合は、適用が難しいのが通常です。

相続税申告を税理士に依頼すべきケース

次のような場合は、税理士への依頼を検討すべきです。

  • 障害区分の判断が微妙

  • 相続人が複数いる

  • 控除適用で相続税が大きく変わる

  • 税務署から指摘を受ける可能性がある

障害者控除は節税効果が大きい分、チェックも厳しい制度です。

まとめ|障害者控除を正しく使って相続税の負担を減らそう

障害者控除は、

  • 条件を満たせば

  • 相続税額を直接減らせる

  • 非常に効果の高い制度

です。

一方で、
「使えると思い込んでいたが実は対象外だった」
というケースも少なくありません。

相続税の負担を適正に抑えるためにも、
早めの確認と、必要に応じた専門家への相談をおすすめします。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい