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タンス預金は相続税の申告の時にばれる?

2024年07月23日

相続が発生すると、配偶者や子供などの相続人は、被相続人の死亡の翌日から通常10ヶ月以内に相続税を申告する義務があります。相続税の申告書類を提出する際に、全ての財産を調査して財産の一覧を作成する必要があります。相続税の申告の対象となる財産には預貯金や株式、生命保険、土地・建物などの不動産、美術品や骨董品などあらゆる資産が含まれます。

もちろん自宅に置いている現金も含まれますが、被相続人が自宅に置いていたお金は申告しなくてもばれないのではないかと考える人もいるかもしれません。当記事では自宅に置いているタンス預金等の取り扱いについて解説します。

タンス預金がばれることがある?

タンス預金ももちろん相続税の対象となりますし、遺産分割の対象となります。タンス預金はまさか税務署にばれることはないだろうと思い、遺産を配分する協議の際に家族にも内緒にしようと考えている人もいるかもしれません。しかし、多額のタンス預金は税務調査で指摘される可能性は高いです。

税務署はKSKシステム(国税総合管理)を使って、被相続人が生前に支払った相続税、所得税、固定資産税など税金に関する他のデータを保有しています。そのため、資産を多く保有していると思われる人が亡くなったにも関わらず、申告がなかった場合や申告された金額が少なかったときは、過少申告等を疑われて、税務調査に入られます。KSKシステムを使うことで、調査の的を絞りやすくなっていますので、調査対象になった場合は高い確率で指摘されます。

また、税務署の権限で相続人名義の銀行の預金口座など金融機関の過去の残高や出金記録なども照会し、出金されたお金を何に使ったのか、説明を求められる場合もあります。タンス預金が疑われる場合は、自宅での調査が行われる可能性もあります。

現金隠しがばれるとどうなる?

現金隠しを行い、税務署により指摘された者には、修正申告によりどのようなペナルティが課されるのか確認しておきましょう。税率は2024年現在のものです。

過少申告加算税

過少申告加算税とは本来よりも過少に相続税の申告を行った際に課される加算税です。過少申告加算税の対象は支払う時期によって異なり、以下の通りです。

法定申告期限等の翌日から調査通知前まで:対象外
調査通知以後から調査による更正等予知前まで:5%
調査による更正等予知後:10%

無申告加算税

無申告加算税は相続税の申告を行わなかった場合に課される加算税です。タンス預金をすることによって、実際の財産は超えるにもかかわらず、基礎控除以内に収まると考え、申告を行わなかった場合、無申告加算税を請求される可能性があります。

無申告加算税の税率は以下の通りです。

法定申告期限等の翌日から調査通知前まで:5%
調査通知以後から調査による更正等予知前まで:10%
調査による更正等予知後:15%

重加算税

重加算税とは財産を意図的に隠ぺいしたことが発覚した場合に課される税金です。重加算税は悪意がある分、重いペナルティを受けることとなっており、税率は以下の通りです。

過少申告加算税に代えて課される重加算税:35%
無申告加算税に代えて課される重加算税:40%

刑事罰に問われる可能性もある

悪意のある財産の隠蔽や相続発生後に資産を引き出して隠す行為は多額の加算税を課されるという問題だけでなく、刑事罰の対象となる事例もあります。いかなる理由があり、財産の一部であっても課税対象となる財産をタンス預金にして申告しないことは許されません。

税務署が税金を徴収する仕組みも昔と比べてシステムで管理されており調査の精度も高くなっており、資産隠しがバレて、証拠をつかまれる可能性も高くなっています。遺産隠しなどの脱税行為は絶対に行わないようにしましょう。

生前にできる対策

自分が亡くなった際に、相続人が悪意が無くても申告漏れとなってしまうことを心配している人も多いでしょう。自分の家族族がトラブルに巻き込まれないようにしっかりと生前の対策をしておくことが重要です。

生前の対策としてまずあげられるのが遺言書の作成です。遺言書に誰に何を遺すか割合と内容をしっかりと記載しておくことが重要です。取引のある金融機関や保有している不動産、お金を自宅や貸金庫に置いてある場合は場所もすべて把握できるように教えておくようにしましょう。

故人が通帳や現金を保管していた場所は、本人以外の家族には意外とわからないものです。相続税の申告を行ったあとに財産が見つかったということケースも多いので、財産を内容ごとにまとめて一覧で見れるようにしておくとよいでしょう。

また、注意点としては相続人に生前贈与をした金額があげられます。亡くなった時期によって贈与した金額が贈与税の対象ではなく、相続財産に加算される可能性があります。贈与税の基礎控除を活用して相続税対策を行う場合は、いつ・誰に・いくら贈与したか、書き残しておき、過去にどのように贈与を行っていたかわかるようにしておきましょう。なお、孫など、相続人ではない人に贈与を行って、相続財産を取得しない場合は相続税に加算されることはありません。

相続税の申告は税理士に相談を

相続税を申告するために財産の評価や複雑な計算を行う必要があり、制度も複雑ですので、知識がなく慣れていない人にとっては流れがわからず大変な作業となるでしょう。親族での遺産分割の話し合いや不動産の登記や金融機関の名義変更の手続きなどの対応で忙しい中で進めることは簡単ではありません。相続税の申告期限は10ヶ月と短く、あっという間に時間が過ぎてしまうでしょう。

当記事で解説したように、故意に財産隠しをした人は罪に問われる可能性がありますが、悪意はなくても誤って申告漏れをした場合や過少申告をした結果、税務調査で指摘されると加算税を請求される可能性があります。

自分で正確に申告することに不安がある場合は、専門家である税理士に依頼することをおすすめします。税理士に依頼すると費用がかかるというデメリットはありますが、特例なども間違えなく適用して申告できるというメリットがあります。初回の相談は無料で応じてくれることが多いのでまずは電話やメールなどで気軽に相談してみるとよいでしょう。

税理士に相談する際は遺産相続に強い税理士が多い税理士事務所・税理士法人に依頼することをおすすめします。普段から相続関連の手続きに精通している税理士に依頼することでスムーズに手続きを進めることができるでしょう。

 

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい