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財産未分割の場合の相続税申告について

2024年09月21日

相続が発生すると法定相続人でどのように財産を分割するか話し合いを行う必要があります。相続人同士の関係が良くない場合や、数が多い例ではなかなか分割方法が決まらない事例も多くあります。

しかし、相続税の申告期限は原則、相続発生の翌日から10ヶ月以内と決められており、財産の分割が決まっていないと相続税の計算ができません。

当記事では財産の分割方法が決まっていない場合の対応方法や注意点等について解説します。

未分割の場合の相続税の申告方法

基礎控除を超える財産がある場合、相続税の申告が必要となります。財産の分割方法が決まっていない場合でも、申告期限は延長されませんので、期限内に相続税の申告・納税を行う法的義務があります。やむを得ない事情があり期限前に財産の分割方法が決まっていない場合は、一旦、民法で定められている法定相続分を各相続人が取得したものと仮定して税金を計算し、税務署に申告と納付を行います。

未分割の場合でも期限内に申告を行わなかった場合は、無申告となり無申告加算税や延納扱いとなり、延滞税など負担が大きくなるため注意しましょう。

期限内に分割方法が確定しない場合は、法定相続割合で申告した後、遺産分割協議を行い確定した時点で財産を取得した者が修正申告を行う必要があります。修正申告を行ったことで、金額が大きくなった場合は追加で納税を行い、払い過ぎている税額については更正の請求を行うことで還付を受けることができます。

未分割のまま申告するデメリット

未分割のまま申告することでどのようなデメリットがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

使えない特例がある

未分割のまま申告する場合は、自宅を相続する場合の小規模宅地の特例や配偶者が財産を相続する際に利用できる配偶者控除など大きく税額を抑えることができる特例を使うことができません。特に東京や横浜などアクセスがよく地価の高い地域に自宅がある場合、小規模宅地の特例が使えないと、かなり税金の負担が大きくなる場合があります。

ただし、申告時に「申告期限後3年以内の分割見込み書」を提出することで、確定した後に要件を満たせば、小規模宅地の特例や配偶者控除を利用し、負担を軽減することができます。各種特例を適用できる可能性がある場合は後で控除の申請ができるように申告期限後3年以内の分割見込み書」の提出を忘れないようにしましょう。

物納が利用できない

物納とは不動産など現物資産が多く、現金で税金を支払うことができない時に不動産などの現物資産で納税する制度です。未分割のまま申告をする場合は、遺産の中に物納できる財産があったとしても、物納を行うことはできません。

評価額が高い現物資産が多い場合は相続人の手元の資産で納税をする必要があり、相続人には大きな負担がかかります。

未分割を防ぐための対処方法

未分割のまま相続税の申告を行うと上記に解説の通り、デメリットが多くあります。財産の未分割が起こらないための対処方法について解説します。

遺言を作成する

相続が発生した時の未分割を防ぐためのもっとも有効な手段は生前に遺言を作成し分割方法を確定しておくことです。不動産など財産の一部を遺言で指定することもできますが、全ての財産の配分を決めておくほうがよいでしょう。

遺言を作成しておくことで配分を事前に決定することができるので、相続発生後に協議をする必要がなく負担は大きく減るでしょう。

早めに財産の一覧を作成し、協議を開始する

生前に遺言が書かれていることが理想ですが、遺言が作成されておらず、相続が発生した場合は、期限内に申告するためにまずは被相続人が保有していた預貯金、株式、不動産、生命保険など相続財産の一覧の表を作成することをおすすめします。

協議をする際に財産の一覧がないと、なかなか話がまとまらず、配分の確定まで何度も話し合いを重ねることになり非効率です。まずは財産の一覧と評価額を早めに確認していただくとよいでしょう。

相続人に知識のある人がおらず、資産の評価や特例の利用が可能かどうかわからない場合は税理士に依頼し、財産の一覧と課税価格を確認し納税額のシミュレーションを依頼するようにしましょう。

相続税の申告は税理士に相談を

相続発生後は遺産分割の話し合い以外にも、金融機関の手続きが不動産の登記などさまざまな手続きがあり、非常に忙しくなります。

また、制度を知っておかないと誤った申告を行ってしまい、税務調査で指摘を受ける可能性があります。国税庁のホームページに計算方法などは掲載されていますが、相続税法の知識がない人が、他の手続き忙しい状況の中、計算を行うことは簡単ではありません。一般的に相続は何度も経験するものではありませんので、知識がない人は多いでしょう。

誤った計算で申告を行った場合、後で調査され、加算税を請求される可能性があります。申告・納税の手続きが難しい場合は税の専門家である税理士に相談し、サポートを受けるようにしましょう。

税理士に依頼することで費用はかかりますが、関連する添付書類の作成も依頼することができ、安心して続きを進めることができるでしょう。税理士に相談する際は土地や建物など課税対象となる資産に関する資料があるとスムーズです。

税理士にも専門分野がありますので、相続税に強い税理士事務所・税理士法人に依頼することが重要です。初回の相談は無料で応じてくれることも多いので、ホームページなどで相続税の申告実績などを確認し、電話やメールなどで気軽に問い合わせてみるとよいでしょう。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい