「相続が発生するとどのような手続きが必要になる?」などと考えていませんか。ご存じの通り、相続の手続きは非常に複雑です。また、経験も少ないため、各手続きを順番に追っているだけでは、今、やるべきことを見失うケースが少なくありません。相続が発生した後は忙しくて、あっという間に時間が過ぎてしまいます。事実、相続税の申告期限を超えてしまう方も多くいます。
詳細を把握する前に、一覧を確認して全体像を押さえておくことが重要といえるでしょう。この作業を行うだけで、スケジュールに従い落ち着いて手続きを進められるようになります。
このページでは、相続が発生してから、通常行わなければならない手続きを、相続関連とその他にわけて一覧にまとめています。以下を参考にすれば、いつまでに何を行わなければならないかがわかるはずです。手続きの全体像を把握したい方は、確認しておきましょう。
相続手続き一覧
相続が発生すると、次の手続きなどを行うことになります。期限別に案内します。
被相続人が亡くなってからの期間 |
相続税関連の手続き |
その他の手続き |
7日以内 |
- |
・死亡診断書の取得
・死亡届の提出
・通夜・葬儀・告別式の開催 |
10日以内 |
- |
・厚生年金の受給停止手続き |
14日以内 |
- |
・国民年金の受給停止手続き
・国民健康保険証の返却
・介護保険の資格喪失届
・被相続人の住民票の抹消
・四十九日法要・納骨
・香典返し |
3カ月以内 |
・遺言書の確認
・法定相続人の調査と確定
・遺産の調査
・財産目録の作成
・相続の放棄と限定承認の手続き |
- |
4カ月以内 |
・被相続人の準確定申告 |
- |
10カ月以内 |
・相続財産の確定と評価
・遺産分割協議と遺産分割協議書の作成
・相続税申告書の作成
・相続税の申告と納付
・相続税の延納・物納の申請(必要に応じて) |
・一周忌法要の準備 |
手続きの概要は上記の表に記載した通りです。遺産相続の手続きは上の表の通り、金融機関の名義変更や、保険の手続き、年金事務所での年金や遺族年金の届出、健康保険の手続きや公共料金の名義変更やクレジットカード、電気・ガス・水道の手続き、貸金庫の内容物確認など、たくさんの作業があり、知識がない人にとってはかなり大変です。また、複数の生命保険に加入し、被相続人が被保険者となっていた場合は、会社ごとに保険金の請求をする必要があるなど、手続きの内容は多岐にわたります。相続発生後、親族は葬祭や病院への支払いだけでなく、金融機関の手続きや納税などあらゆる関係の手続きをしていく必要があるのです。
債務が多い可能性がある場合に、ポイントとなるのは、相続が開始した日から3カ月以内に相続の放棄と限定承認の手続きを家庭裁判所に申し出ることです。
相続放棄はプラスの財産・マイナスの財産を含め被相続人の財産を承継しないこと、相続の限定承認は被相続人のプラスの財産の範囲内で債務を承継することを意味します。明らかに財産がマイナスの場合は、基本的に相続放棄を選択します。プラスの財産の価値とマイナスの財産のどちらが多いかわからなければ、限定承認が有効です。
これらを行うため、3カ月以内に役場で出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取得し、法定相続人の調査と確定をする必要があります。戸籍謄本は被相続人の本籍地の役所で取得することができます。本籍地を何度も転籍している場合は、たくさんの役所に行くか郵送で収集する必要があります。一度相続放棄をすると、変更することはできません。
戸籍は結婚や出産が記されていて、法定相続人が誰かを証明する書類として金融機関などに提出する必要があります。家族であれば、相続人はわかっているとは思いますが、預貯金などを解約する際に、金融機関や不動産登記をする際に公的な書類として証明していただく必要があるのです。
また、金融機関で取引がある口座の通帳や証書を確認するなど遺産の調査を行わなければなりません。金融機関の取引以外にも生命保険の契約がある場合は保険金の請求や株式、不動産、ゴルフ会員権、金や自動車などの現物資産も相続税の課税対象です。個人年金が支給されている場合は、年金受給権も相続税の課税対象となります。多くの資産を持つ人はそれだけ調査にも時間がかかることが多いので注意が必要です。また、財産の種類によって対応が違いますので、まずは被相続人の取引の状況を調べることが重要です。
ちなみに、相続の限定承認は相続人全員で行いますので全員で同意する必要があります。相続人の意見がまとまらなければ、限定承認をすることができません(相続の放棄は単独で行えます)。また、相続の放棄を選択すると、亡くなられている場合とは違い、代襲相続は発生しません。代襲相続は、相続人が死亡などで相続権を失っているときにその人の子が代わって相続をすることです。放棄をした場合は、はじめから相続人ではなかったことになりますので、放棄した相続人は、その後の手続きは不要となります。ただし、放棄をした相続人も基礎控除の算定上は数に加算されます。
次のポイントは、遺産分割協議をできるだけ早く始めることです(遺言書がない場合)。
遺産分割協議は、遺言がない場合に、相続人間で遺産の分け方を話し合うことを指します。したがって、事前に相続財産の確定と評価を済ませておかなければ、分けることができません。生前に遺言を作成し、遺言通りの内容で分割するのであれば、遺産分割協議は必要ありません。遺言がない場合は民法で定められた法定相続割合を基準に、誰が何を受け取るか話し合って決めることになります。
たとえ、配偶者や子の遺留分を侵害するような内容であっても、相続人間で合意ができれば、問題ありませんが、万が一相続人間で権利を主張し合ってトラブルになった場合は弁護士に相談するようにしましょう。元々相続人間の関係が悪い状態の場合は、まとまらないことが多いので、初めから弁護士に相談してみてもいいでしょう。
最近は亡くなる前に遺言を作成したいという人も増えており、市区町村など行政のサービスで相談に応じてくれるところもあるので、利用してみてもよいでしょう。遺言には公証役場で作成する公正証書遺言と自筆証書遺言があります。それぞれの違いを理解して書いておくようにしましょう。法定相続分とは異なる割合で財産を遺したい方や、法定相続人とは異なる他の人に財産を遺したい場合は、先に遺言を用意しておく必要があります。
遺言は自筆で作成し、自宅で保管することもできますが、自宅で保管していた場合は、開封前に家庭裁判所で検認の手続きを受ける必要があります。相続発生後はやるべきことがたくさんありますので、検認が必要ない法務局の保管制度や公正証書での作成をおすすめします。また、遺言には、日付や署名・捺印が必要となるなど形式的な要件があり、不備があると本来の効力が発生せず、有効な遺言書として認められない場合があります。作成方法やどのような言葉で書いていいかわからない場合は、弁護士や司法書士、税理士など、遺言に詳しい人に相談するようにしましょう。
遺産分割の方法には、遺産をそのまま分割する現物分割、遺産をお金に変えて分割する換価分割、ある相続人が遺産をそのまま取得して代わりに自分の財産を支払う代償分割、各相続人の持ち分を決めて遺産を共有する共有分割があります。
全員が合意しなければ、手続きは進みません。双方に強い主張を繰り返し、各相続人の利害が対立すると、遺産分割協議はなかなか整いません。遺産分割協議書は相続税の申告の作成に欠かせないものなので、話し合いは早めに始めておく必要があります。
被相続人に所得があった場合、準確定申告を行う必要があります。通常の確定申告は1月1日から12月31日までに得た1年の所得を3月15日までに確定申告をする必要がありますが、相続が発生した場合は4カ月以内に被相続人の所得を準確定申告する必要があります。
相続税の申告は10カ月以内
相続税がかかる場合、相続税の申告手続きを10カ月以内という短い間に管轄の税務署に申告書を提出し、税金を納付まで完了する義務があります。結果的に基礎控除の範囲内であれば、申告は必要ありませんが、財産がどれくらいかわからない場合は、10か月以内に終わらせるつもりで、資料作成や手続きを進めるようにしましょう。相続手続きは相続人全員で行う必要がありますが、財産を多くもらう人が中心になって行うことが多いです。自分が財産を多く受け取る可能性がある場合は率先して手続きをすすめ、他の相続人が納得できるように手続きの状況を説明しておくようにしましょう。
相続税の申告までに財産の内容を把握し、遺産分割協議まで終わらせておかなければいけません。そのため、あらゆる作業を同時に進めていく必要があるでしょう。
相続発生後、故人の相続人は悲しみに暮れる中で、あっという間に時間が経ってしまい、日程に余裕はありません。また、小規模の宅地の評価額を軽減する小規模宅地の特例など、原則、期限内に申告を終わらせないと適用できない特例もありますので、税額を増やさないためにも期限を過ぎないように申告手続きを終わらせることは非常に重要です。また、特例は大きなメリットがありますが、利用には様々な要件がありますので、所有する財産が適用することができるか、税理士に確認するようにしましょう。
財産の内容を遺族が知っていた場合であれば、すぐに遺産分割協議に入ることができますが、財産の内容がわからない場合は調査にもかなり時間がかかるでしょう。財産の額がわからない場合は早めに通帳がある銀行などの金融機関の窓口に、連絡して、全体像を把握しておくことが重要です。勤務先によっては平日、金融機関に行くことができない場合もあると思います。そのような場合、スムーズに手続きが進まない可能性がありますので、早めに着手する必要があるでしょう。
被相続人が遠方に住んでいた場合、一般的に郵送で評価証明を依頼することも可能です。金融機関によって用意する書類や請求の方法が異なりますので、まずは電話で連絡してみることをおすすめします。
相続税がかかるか否かでかなり手続きの内容が異なります。受ける資産が多く、基礎控除以上の財産があり、相続税がかかりそうと判断した場合は迅速に手続きを行っていくようにしましょう。また、相続発生前3年以内に贈与した財産がある場合は贈与税ではなく、相続税の対象となります。贈与した金額もしっかりと確認するようにしましょう。
預金の名義変更や、不動産を保有している場合は、法務局で土地・建物の登記を速やかに行う必要がありますが、登記は相続税の申告の後でも問題ありません。登記手続きは費用がかかりますが、司法書士に代行での手続きを依頼してもよいでしょう。
相続税申告・納付の手続きは複雑
いかがでしたでしょうか?今回は、相続が発生してから行わなければならない手続きを解説しました。
一覧を見てわかる通り、さまざまな手続きを行わなければなりません。また、各手続きや添付する書類の書き方は非常に複雑です。相続税がかかる場合は、被相続人の住所のある税務署に相続人が期限内に申告を終える必要があります。もし申告を行わなかったり、財産の調査漏れがあった場合、税務調査で銀行口座や証券会社の残高や異動を調べられ、追徴で課税されることもあります。
相続人の中に高齢で手続きや難しい方や認知症の方がいる場合などは手続きがなかなか進みません、代理人を選任する必要があり、通常よりも時間がかかるケースもあります。このような場合、さらに手間がかかりますが、放置せずに早めに専門家に依頼することをお勧めします。
インターネットなどで、基本的な知識については身に着けることはできますが、申告・納付期限に間に合わないとペナルティを課され、実際に支払う納税額が増えてしまいます。心配な方は、専門家である税理士に早めに相談しましょう。
また、税理士にも専門分野がありますので、相続税の申告の実績が多い税理士や税理士法人に依頼することが重要です。
広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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