故人から財産を引き継ぐことになった場合、事情によっては前向きに考えられない方もいるでしょう。そういったときに選択されているのが、相続放棄です。
相続放棄には民法で定められた制度です。相続放棄には、遺産分割協議の中で相続しない意思を伝える方法と、家庭裁判所に申請する方法があります。
特に相続では多額のマイナスの資産も引き継ぐことになるので、プラスの資産よりも借金のほうが多いようなケースで、相続放棄について検討する人が多いです。ただ、まだどうしようか悩みながら「相続放棄の具体的なメリットが知りたい」と考えている方のため、知っておきたいポイントをご紹介します。
この記事を読むことによって自分に相続放棄が向いているかどうかが判断できるようになるので、参考にしてみてください。
相続放棄メリット2選
相続放棄をすることによって相続人が期待できるメリットは、大きく分けて以下の2つです。
1. 相続トラブルのリスクが減る
相続放棄によってお金をもらうことはできなくなりますが、相続トラブルに巻き込まれるリスクが減ります。遺言書がなく、残された家族がわけ方で揉めているようなケースは特に有効だといえるでしょう。
ただ、遺産分割協議での放棄は話し合いが必要なので、自分に有利になるような意見を述べる人が多いとまとまらないケースもあります。最悪の場合、弁護士をたてて長い期間の調停に入るケースもあります。相続トラブルの可能性が高い方は相続放棄も検討してみると良いでしょう。
2. マイナスの財産を負担せずに済む
家庭裁判所に申請して行う相続放棄では、価値のあるプラスの相続財産を取得するだけではなく、借金などマイナスの財産なども放棄できます。そのため、故人の債務などを子や兄弟が引き継ぐ必要がありませんので債権者から請求されることもありません。
遺産分割協議で相続を放棄しただけは故人の負債を免れることはできないので注意しましょう。明らかに預貯金などのプラスよりもマイナスの資産の額のほうが多い場合や、利用予定のない田舎の土地のみ保有している場合など、財産の内容によっては相続放棄のメリットが大きいです。
3. 生命保険の保険金は受け取ることができる
生命保険の保険金は受取人固有の財産として受け取ることができます。基本的に相続放棄をしている場合、全ての財産を受け取る権利を失いますし、遺産分割協議にも参加することはできませんが、生命保険のみ受け取ることができます。
相続放棄の注意点
相続放棄をする際にはどのような点に注意をすればよいのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。
原則3カ月以内に放棄をする必要がある
理由がある場合は期限の延長を申請することができますが、原則3か月以内に放棄の手続きをする必要があります。申請は被相続人の住所があった場所の家庭裁判所です。期限を伸長できず、自分で期限内に行うことが難しい場合は、司法書士などに代行してもらうことも可能です。
財産を処分すると相続放棄はできない
預貯金など財産は換金して、使ってしまうと単純承認したものとされますので、その後相続放棄をすることは認められず、借金も弁済義務が生じます。相続放棄をする可能性がある場合は財産を処分しないようにしましょう。
他の法定相続人に迷惑がかかる場合がある
1人が相続放棄をすることで、その人はもともと相続人ではなかったことになります。そのため、相続人の数が減ることで負担がその分多くなったり、次の相続権の順位の人が繰り上がって相続人になったりすることがあります。相続放棄は自身の意思で行うことができますが、一切周りに伝えないと後々トラブルになる可能性があります。相続放棄をすることは兄弟姉妹など相続権のある人やその配偶者など影響のある親族には通知しておく方がよいでしょう。
一度放棄すると撤回することはできない
家庭裁判所に申述し、一度相続放棄をした場合、相続する権利を失い、あとで撤回することはできません。思ってた以上にプラスの財産があった場合や、自宅の土地や建物など大切な資産や特定の財産を引き継ぎたいと思った場合でも撤回し、財産を受けるることはできませんので注意しましょう。遺産相続の際に相続放棄は選択肢の一つではありますが、慎重に検討する必要があります。まずは財産をまとめて金額を記載した一覧表を作るようにしましょう。
相続発生前に放棄はできない
遺留分の放棄は生前に行うことができますが、相続放棄は相続発生後行う必要があります。先に放棄をして、承認を得ておくことはできませんので、注意しましょう。
あわせて検討したい限定承認
借金の負担を背負わない方法として、上記の相続放棄以外にも限定承認という方法がありますので説明しておきます。
相続放棄をするか迷っている場合は限定承認という方法もあわせて検討してみてもよいでしょう。限定承認とは遺産の中でマイナスの財産がある場合はプラスの財産の範囲内で返済するという方法です。万が一マイナスの財産の方が多く、プラスの財産の範囲で返済しても借金が残った場合は、弁済する必要がありません。あくまで引き継いだ財産の範囲で返済するということになりますので相続人が借金を抱えることはありません。
そのため、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産どちらが多いか調査し、期限内に把握することが困難な場合に有効な手段となります。ただし、限定承認は、被相続人が亡くなってから3ヶ月以内に相続人全員で行う必要がありますので相続人間で連絡を取り合って、同意を得たうえで限定承認をする必要があります。管轄の家庭裁判所は被相続人が最後に住んでいた地域の家庭裁判所となります。
管轄の家庭裁判所に申述書を作成し、戸籍謄本や住民票、財産目録などの資料とともに提出し、申立てを行います。限定承認が受理されるまでに手間と費用がかかるうえに、それぞれの考えが複雑に絡み合って考えがまとまらなず、申立ができない可能性がありますので、期限に間に合わせるためには、相続開始後早めの対応が必要です。
限定承認の申述書は家庭裁判所のサイトでダウンロードすることができます。
家庭裁判所ホームページ
具体的なメリットについてよく確認を
正確な法律や税金の知識がないまま、相続放棄を決断することは危険です。相続放棄をすることによってどういったメリットがあるのかについてご理解いただけたかと思います。もちろん、メリットばかりではないので、デメリットについてもよく理解したうえで検討しましょう。
相続放棄を検討する際はまずは財産の状況を調査してみましょう。財産の内容がわからければ、判断することができません。相続発生後は戸籍の収集などで忙しく、あっという間に時間が過ぎてしまいます。相続放棄をしようか、相続しようか悩んでいるのであれば税理士に相談してみるのもおすすめです。相続した場合の、財産の評価や税金関係がよくわからない方も、専門家である税理士への相談がおすすめです。初回の相談はサービスで行ってくれる税理士も多いですし、書類の書き方や添付する書類の準備もサポートをしてくれます。税理士に依頼する際は遺産相続に関する業務の実績や経験が豊富な税理士に依頼すると安心です。
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