お役立ちコラム一覧

不動産が多く相続税が払えない場合の対処法を解説!

2024年02月11日

基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)を超える財産を保有している人が亡くなり遺産相続が発生すると、財産を受け取った相続人は相続税を支払う義務があります。財産に応じて税金を支払うことになりますが、財産のうち大部分が預貯金だった場合は、相続した現金で税金を支払うことができます。一方で財産が土地や建物など不動産中心だった場合、相続税を支払うことができない可能性があります。土地の評価が高い場合は大きな負担となりますので注意が必要です。

相続税は被相続人が死亡した翌日から10ヶ月と期限が決められており、期限内に申告と金銭での一括納付を完了させる必要があります。延滞した場合や誤った申告行った場合は税務調査で指摘され、申告を怠った場合は無申告加算税がかかりますので、納税資金が不足しそうな場合は、相続発生後すぐに対策を講じる必要があります。10ヶ月というと長く感じられるかもしれませんが、相続開始後、さまざまな手続きを行わなければならない中での10ヶ月はあっという間に過ぎてしまいます。

当記事では納税するための現金が足りない場合の対処法を解説していきます。

納税資金が足りない場合の対処法

早速納税資金が足りない場合の4つの対処法について以下に解説します。それぞれの注意点も解説しますので参考にしてください。

不動産を売却する

相続発生後、相続財産として引き継いだ不動産をすぐに売却し、現金化することで税金の支払いに充てる方法です。不動産の売買は時間がかかることも多く、明確な時価があるわけではありませんので急いで手放すことで相場よりも安い額でしか売れない可能性もありますし、今後その土地を活用することができなくなります。

流れとしては遺産分割を行ってから、査定などを行い買主を募集して売却する必要がありますので、簡単に売却できわけではありません。相続税の10ヶ月以内という申告期限までの短い期間に売却するのは、早めに対応し始めても難しいケースもあるでしょう。

また、売却した不動産の購入価額が分からない場合、多額の譲渡所得税がかかりますので、翌年の確定申告で所得税を支払う必要があります。

そのため、売却資金全額を納税に充てることができないケースも多いです。

延納制度を利用する

相続税の納税が期限内にできない場合、管轄の税務署の税務署長に添付書類をつけて届出を行って、相続税の延納制度を使い期限を延長することが可能です。

延納を利用できるのは10万円以上の納税額であることが条件で、最長で20年間期限を延長し分割払いをすることができます。そのため、一括で払わないことで、不動産の事業から得られる収益で少しずつ返済することができるというメリットがあります。ただし、利子税がかかりますので、不動産の収益次第では売却して一括で支払った方が有利なケースもあります。

物納制度を利用する

物納とは不動産や有価証券、船舶などで現金以外の他の資産で税金を納める方法です。物納の申請をする場合は、延納によっても納税できない場合に限られます。また、申請書を提出したからといって必ず物納を選択できるわけではありません。

自宅の不動産などを物納する場合、小規模宅地の特例などを適用した場合、減額後の評価額で納付することになりますので注意しましょう。

金融機関からお金を借りる

申告期限までに土地を担保に提供し、銀行など金融機関から融資を受ければ、納付することができます。ただし、土地を担保にする場合、金融機関が土地の担保評価を行いますので、希望金額が借りられるわけではありません。担保評価が低く、借りられる金額が税額に満たない可能性もありますし、借入ができなかった場合は他の方法を探す必要があります。

また、借入ができたとしても利子を支払う必要があります。税金を納めることはできますが、その後に利子も含めて金融機関に利息を支払う必要がありますので、払う金額は高くなるというデメリットがあります。不動産の賃貸で得られる収益で利子と元本を支払うことができるか確認してから借入を依頼するようにしましょう。

生前にできる対策

納税資金不足となる可能性が高い場合、生前にできることはどのようなことがあるのでしょうか。生前に検討できることや対策を具体的に確認しておきましょう。

まずは現状を把握する

相続税対策をする際にまずすることは現状を把握することです。課税の対象となる預金や株式、不動産、貴金属等価値の高い動産など各資産をまとめて一覧にし、評価額を把握し、どれくらいの相続税がかかりそうかシミュレーションをしておきましょう。相続が発生する前に税額を知っておくことで、さまざまな対処を行い、税金を安くすることも可能です。

土地は路線価格、建物は固定資産税評価で計算をする必要があります。路線価は国税庁のホームページに掲載されています。所有している物件の収益性が低い割に評価が高い資産は財産を受ける者にとって負担が生じるため、事前に処分することを検討してもよいでしょう。

財産や相続人の内容によっては配偶者控除や小規模宅地の特例等、法律で利用が認められている各種特例や控除の種類や条件等も事前に確認することで、先に税率や税額などの状況を正確に把握することができます。

不動産の評価額や実際にかかる税金を自分で計算することが難しい場合は、専門家である税理士にサポートを依頼するようにするとよいでしょう。紹介してもらうことが難しい場合は、ホームページや各種サイトなどで情報を得て、相続税の申告実績が豊富でノウハウを持つ税理士事務所・税理士法人を探し、電話やメールで相談が可能か問い合わせてみましょう。

配分を決めておく

誰が何を相続するかによって相続税の負担も変わってきます。相続発生後に配分の割合を協議することが困難な場合も多いので、先に遺言書を作成しておくなど遺産分割の方法や割合を決めておくなど準備をしておくことで、相続人は少ない負担で進めることができるでしょう。

特に一人の相続人にほとんどの財産を遺すケースでは遺留分を侵害する可能性もあります。遺留分を請求されないよう放棄をしてもらう場合は、事前に意思確認も必要となります。

遺言書を作成しておくことで、相続人間の関係が良くない場合でも不動産の登記の手続きや書類の作成もスムーズに行うことができます。トラブルが起きてから解決することは難しいので、事前にトラブルを回避することをおすすめします。

法律の知識がない人で書き方がわからず、自身で遺言書の作成ができない場合は弁護士や司法書士などに相談してみましょう。市役所などの行政サービスで無料相談会を行っている場合もありますので参加してみてもよいでしょう。

相続発生後は配分が決定するまで金融機関の口座が凍結され、引き出せなくなってしまいますが、遺言を作成しておくことで比較的早く名義変更をすることができ、家族が利用することができるようになります。

資産を贈与しておく

生前に納税資金として現金を生前贈与しておくことで、被相続人の遺産を減らすことができるという理由で相続税を減らすことができます。また、贈与をした資金を貯めておけば、相続発生時の納税資金を用意することができます。

2024年に贈与税の改正があり従来多くの人が行っていた暦年贈与は相続発生時の繰り戻し加算が3年から7年に延長されました。一方で相続時精算課税制度に非課税枠が新設されたため、今後は相続時精算課税制度を利用して贈与を行う人が増えるでしょう。

収益性の高い高額な不動産がある場合は相続時精算課税制度を使って事前に名義変更しておくことで不動産から得られる収益を相続人の資産にしていくことができるので、検討するべき方法の一つです。収益は主に建物から生まれるため、建物部分のみ贈与する方法もおすすめです。

建て替えや修理が必要な場合は先に済ませておく

保有している不動産に建て替えや大規模な修理が必要な場合は金融機関から借り入れをして先に修理をしておくことも選択肢の一つです。被相続人に借金などマイナスの資産があれば、亡くなった時に預貯金や上場株式、不動産などプラスの財産の評価額から差し引くことができます。大規模修繕を行っても、かかる費用ほど相続税評価額は上がりませんので、節税になります。

建て替えや修繕に必要なお金は預金から出さずに借金をすることで、手元に資金を残すことができます。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい