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不動産を活用した相続税対策は有効?

2025年10月12日

基礎控除(3,000万円×法定相続人×600万円)を大きく超える財産をお持ちの方は将来、相続が発生した時に親族に負担がかからないように事前に対策を検討しようと考えている人も多いでしょう。

相続税対策のひとつとして、不動産を活用した相続税対策を行う人がいます。不動産を活用した相続税対策は効果も大きいですがリスクも大きく、しっかりと理解して行う必要があります。

当記事では不動産を活用した相続対策についてポイントを抑えて解説します。

不動産の相続税評価

不動産を活用した相続対策を理解するために、まずは不動産の相続税評価方法を解説します。不動産は土地と建物に分かれており、それぞれ評価方法が異なります。

土地は地域によって定められた路線価×面積を基準に評価を行います。路線価は各道路に付されており、ターミナルへのアクセスの良い人気の場所や大通り沿いに面している土地は高くなる傾向があります。路線価は実際に売買される時価の8割くらいの額で設定されています。土地の状況にもよりますが、基本的に、相続税評価よりも時価の方が安いことがほとんどです。

建物は固定資産税評価額で評価を行います。固定資産税評価額は築年数等にもよりますが、時価の6割から7割くらいとなることが多く、軽減することが可能です。

上記に解説した通り、土地・建物ともに時価と課税の対象となる相続税評価額は異なり、時価よりも相続税評価額の方が低くなる傾向があります。そのため、現金を不動産に換えるだけで相続税対策となります。

不動産を活用した相続税対策は様々な手段と比較して、慎重に考える必要があります。また、相続発生の直前に行うことは難しいため、早めの準備が必要となります。

投資用不動産は効果大?

投資用不動産を購入することで、相続税の節税になるという話を聞いたことがあるでしょう。持ち家以外に投資用不動産を購入することでなぜ、節税効果が大きくなるのでしょうか。

貸家建付地評価が使える

上記に解説した土地の評価方法は自分で土地を利用する場合の自用地評価です。賃貸アパートなどを建築して他人に貸す場合は貸家建付地評価となり、更に評価を下げることができます。

貸家建付地の評価方法は以下のとおりです。

自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地の評価額

借家権割合は全国一律で30%と定められており、借地権割合は路線価図で確認することができます。賃貸割合は貸し出すことができる部屋の床面積に対しどれくらいの割合を賃貸に出せているかの割合です。満室の場合は100%となります。

例えば、1億円の土地が借地権割合60%、賃貸割合が100%の場合は相続税評価額は8,200万円となり、1,800万円分土地の評価を下げることができます。

贈与をすることで利益も次の世代に渡せる

相続時精算課税制度を使うことで2,500万円までの財産を一括で贈与し、贈与税ではなく相続税の対象として相続発生時に税金を支払うことになります。

相続時精算課税制度を活用して、贈与により取得した不動産から得た資金については贈与を受けた受贈者のお金として貯めることができますし、値上がりの恩恵で利益が得られる可能性もあります。当然、被相続人が亡くなった時の相続税の課税対象として計算されることはありません。

相続税対策で贈与を検討する場合、時間がかかりますので、早めに始めることをおすすめします。

借り入れをすることで、効果を大きく出来る

不動産を活用した相続税対策を行う際は、借入金を入れることで宅地や建物の規模を大きくすることができます。現金を不動産に換える時の減額効果は物件の価格が大きければ大きいほど、減額効果も大きくなりますので、節税メリットも大きくなります。

ローンなどの借金などマイナスの財産がある場合は相続財産から差し引くことができます。例えば、2億円の資産があり1億円の借金がある場合は相続税の課税対象となる財産は1億円となります。

投資用不動産を活用した相続対策を行うときの注意点

住宅以外の投資用の不動産を活用した相続対策を行う時にもデメリットもあります。

どのような点に注意をすればよいのでしょうか。注意点と対応方法について具体的に解説します。

リスクが大きい

投資用として保有する賃貸用の不動産は物件価格も高く、節税の効果も大きくなりますが、その分リスクも大きくなります。不動産には様々なリスクがあり、空室が多くなかなか収益が生まれず、赤字が続くリスクや天変地位により建物が大きく損傷するリスクもあります。

また、借入をして、新築している場合などでは今後の金利上昇によって、返済の負担が大きくなる可能性もあります。節税効果を得られても、購入した物件の割に収益が得られず、売買しても、建築費用などの元がとれずに節税効果以上に大きな損失を被る可能性があります。

節税目的で購入する場合も、不動産単体の損益を考慮する必要があります。紹介された物件を決める前に周辺の市場をしっかりと調査し、賃貸経営のリスクについても理解したうえで単体で黒字にできるかを検討して購入するようにしましょう。

節税も重要ですが、資産形成として収益を獲得することができるのか、不動産投資自体を失敗しないことも重要です。

遺産分割が難しい

事業用の賃貸マンションやアパートなど一棟ものの収益物件は資産規模も大きく高額となるため、子が複数いる場合は分け方が難しいことが多くあります。

税額を大きく下げることができるとしても、府小津さんを理由に相続人間で争いになる可能性がある場合は慎重に検討するようにしましょう。

投資用不動産を購入する際は生命保険の受取人に指定して調整するか、不動産を遺さない方の相続人で暦年贈与で110万円ずつ、遺していくということも一つの方法となります。生命保険は法定相続人×500万円の非課税枠がありますので、生命保険自体が節税対策としても有効です。

また、遺言を作成することも選択肢の一つです。遺言書を作成する際は、相続人以外にも財産を遺すことができますので、孫へ代飛ばしで遺すことも可能です。孫に遺贈することで、相続税がかかる回数を減らすことができるため代々守っている土地を次の世代に遺したい場合に有効な手段です。

ただし、遺言を作成する際は遺留分にも留意する必要があります。遺言の内容についてしっかりと検討したい場合は弁護士、司法書士や税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

手間が増える

マンションやアパートなどの投資用不動産を保有することで、家賃の管理や賃貸人とやりとり、不動産所得が発生するため、1年間で得られた所得は所得税、住民税などの課税対象となり毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得に対し、確定申告などの手間があります。

不動産投資で得られた収入は耐用年数に応じて減価償却費などを経費として計上して差し引くことができるため、得られた金額がすべて所得税の対象になるわけではありませんが、固定資産や所得税などの金銭的な負担もあります。

不動産の賃料収入などで得られる税金は給与所得などと同じで累進課税となりますので給与所得等の所得が大きい人は税率も高いため、思ったように手取りが増えないということもあるでしょう。また、売却した際も5年超の長期譲渡か、5年以内の短期譲渡に分かれて譲渡所得が課税されますので、売却した際に利益が出た場合にも所得税を支払う必要があります。

小規模宅地の特例

小規模宅地の特例は自宅の土地に利用している土地の評価を最大330㎡を限度に80%減額できる特例です。相続税を大きく減らすことができることができますので、不動産を保有している人はぜひ利用したい特例です。

他にも貸付事業に利用している土地も200㎡まで50%減額することが可能です。同時に使うことができず、それぞれの割合で利用することになります。土地の単価などによってどの土地で利用するかもケースによって異なりますので、慎重に検討する必要があります。

不動産を活用した相続税対策は専門家に相談を

相続税の制度や仕組みは複雑で、不動産の評価や特例の適用可否の判断は知識が無い人にとって簡単なものではありません。また、相続税対策を行うことで、リスクも伴いますので慎重に検討する必要があります。

まずは相続税対策を実際に行う前に、所有する預貯金、株式、生命保険、不動産、金などの資産をまとめた一覧の表にし、どれくらいの相続税がかかりそうかをシミュレーションしておくとよいでしょう。今後の相続税法の税制改正などにより、特例の要件が変わる可能性はありますが、現状を把握しておくことは大切です。

相続により財産を取得した者は相続開始の翌日から10ヶ月以内と期限も短く、税務署への申告手続きと納付を期限内に完了する必要があります。生前に現時点のシミュレーションをしておくことで、納税する金額も確認できますし、スムーズに申告手続きを進めることができるでしょう。

一般の人は相続税の計算はほとんど経験したことがないということが多いでしょう。経験が少ない人が分からないことは当然のことです。

税金の計算などを自分で行うことが難しい場合は、税務の専門家である税理士に相談することをおすすめします。税理士のアドバイスを受けることで、特例や控除なども漏れなく考慮し、相続税の負担を抑えることができる場合もあります。

広島相続税相談テラスでは、相続税・贈与税に詳しい税理士が多数在籍しており、相続対策や相続発生後の申告について皆様の依頼に応じてサポートを行い、お悩みを解決しております。

初回の相談はサービスで無料で対応しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい