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新築建物の評価はどうなる?相続税の評価方法を解説

2022年04月06日

相続が発生すると被相続人のすべての財産を評価し、基礎控除を超える場合は、相続税が課税されますので、相続が発生した後、10カ月の期限内に、税務署に相続税の申告と納税を行う必要があります。期限内に資金が間に合いそうにない場合、延納という方法もありますが、延滞税がかかり、余計な負担がかかってしまうことにもなります。

居住用の住宅を保有する場合に利用できる小規模宅地の特例などを適用することによって、評価を下げられる部分があり、相続税が0円であったとしても申告が必要ですので、各種控除を利用する場合は注意が必要です。財産を相続により取得する人はまずは申告が必要かどうか判断し、期限に間に合わせるために急いで対応する必要があるでしょう。

財産によって、評価の方法は異なります。被相続人が預金だけでなく、不動産の所有者となっている場合は不動産の評価方法を確認して評価をする必要があります。不動産は土地と家屋で分けて評価を行います。貸家や借地権、借家権も財産として評価する必要があります。
当記事では不動産の中でも、課税価格を確定することが難しい新築建物の評価について解説していきます。

土地・建物の相続税評価方法

土地や建物の相続税評価は実際に売却する際の時価や実際の相場とは異なる評価方法で行います。まずは土地・建物の原則的な相続税評価方法についてみていきましょう。

土地は「路線価×面積」で相続税評価を行います。また、賃貸に出している場合、貸家建付地として、その土地の借地権割合等に応じて評価が減額される仕組みになっています。

路線価が付されていない土地については土地の場所や用途に応じて定められた倍率によって計算します。固定資産税評価額に倍率を乗じることで、相続税評価額を算出することができます。

路線価や倍率は国税庁のHPで簡単に確認することができます。

財産評価基準書|国税庁 (nta.go.jp)

相続税を計算する際の建物の価額は原則、固定資産税評価額で評価する制度となっています。固定資産税評価額は毎年、送付されてくる納税通知書に記載されている金額で確認することができます。

土地建物は時価よりも相続税評価が低くなりますので、資産家の方は保有している土地の上に建物を建てたり、土地建物を購入したりすることで、相続税対策を行う方も多くいらっしゃいます。高齢となってから、対策を行う方も多いため、アパートやマンションを建築した直後に相続が発生するケースもあります。

では、新築の建物で固定資産税評価額が決まっていない建物の評価はどのように計算を行えばよいのでしょうか。

もし、近隣に同種類・同規模で築年数の建物があれば、その建物の固定資産税評価額をもとに算出します。しかし、同じような敷地に、対象となる建物があることは非常に稀です。現実的には近隣の物件を参考にして建物の評価を行うことは難しいでしょう。

近隣に都合の良い建物が無い場合は、(再建築価格-償却価格)×70%で計算をします。

例えば、再建築に5,000万円かかる建物を100万円分減価償却しているケースでは以下の計算となります。

(5,000万円-100万円)×0.7%=3,430万円

固定資産税評価が付されていない場合の評価方法は建物の用途に関わらず(再建築価格-償却価格)×70で計算を行います。

そのため、自宅用に建てた建物であっても、賃貸用に建築したアパートであっても評価方法は同じです。

この評価方法は相続税だけでなく、贈与税の場合も同じです。自宅や貸している土地や建物など所有している不動産を贈与する場合、贈与税の対象となります。贈与税は相続税よりも税率が高く、贈与をすることでデメリットの方が大きくなる場合がありますので注意しましょう。

相続税の評価と相続税額のシミュレーションをする場合は、財産を一覧にし、各財産ごとに評価を行っていくとよいでしょう。その際、生命保険など非課税となる相続財産もありますが、手続き漏れを防ぐためにも一覧には正確に記載するようにしましょう。一覧の表を作成しておくことで被相続人が亡くなったあとに財産を調べる手間を省くことが可能です。

不動産を相続した人は登記を行う必要がありますので、分筆されている土地は1筆ごとに記載しておきましょう。

判断に迷う場合は専門家に相談を

新築建物の場合、固定資産税評価額が付されていない場合、再建築価格の70%程度で評価を行いますが、固定資産税評価額は50%程度に抑えられることが多いです。

つまり、固定資産税評価額が付された方が相続人にとって有利になる可能性が高いのです。新築建物の評価は判断が分かれるケースが多く、税理士等の専門家に相談することで評価を低くする方法がみつかるかもしれません。高い評価となり、相続税を支払う金額が大きくならないように専門家に相談するようにしましょう。

また、自宅不動産や事業用不動産については、特例を利用することができ、評価額を減額することができます。特例を受けることで、評価が下がり、課税される率も下がることもあります。税率が下がること相続税の負担も軽くなります。特例の適用可否も複雑な判断が求められますので、費用はかかるものの、相続に強い税理士や税理士法人など専門家のサポートを受けることをおすすめします。

亡くなったあとに相談することも可能ですが、相続発生前に相談することで、遺言の作成について相談することも可能です。遺言を作成することで遺産分割をする必要はありませんのでトラブルを避けることができます。ただし、遺言作成にあたって遺留分などの知識も必要になります。税務だけでなく、法務の知識や経験が必要となってくるのです。また、生前に対策を行うことで税額を軽減する方法を相談することも可能です。財産や相続人の状況に応じて適切な対策を行うことで、遺された家族の負担を軽減することができるでしょう。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい