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相続財産は所得税の対象?相続税と所得税の関係を解説!

2022年04月11日

相続が発生すると被相続人の財産を相続人で分けることになります。相続財産は預金や株などの金融資産だけでなく、不動産や金などの現物資産も含まれます。場合によっては、被相続人の相続財産の総額がかなりの金額になることもあるでしょう。相続財産の額によっては相続税がかかることになりますので、税金の申告・納付が必要です。

財産を相続するとどのような制度に基づいて課税がされるのでしょうか。今回は相続税と所得税の関係についてポイントをおさえて案内していきます。

相続税の申告が必要な場合

被相続人が亡くなった時点で、各種財産を評価し、一定の額を超える財産がある場合、相続人が相続税の申告・納付を行う必要があります。相続税がかかるか否かを判断するための基礎控除は以下の計算式で算出することができます。

3,000万円+法定相続人×600万円

例えば、法定相続人が3人の場合は4,800万円(3,000万円+3人×600万円)です。

法定相続人が3人の場合は、4,800万円まで、課税対象の遺産総額から控除されます。4,800万円を超える場合、10カ月以内の相続税の申告・納付を行う必要があります。

相続財産が大きければ大きいほど、税率も高くなり、相続税の税額も大きくなります。一方で相続財産が基礎控除以下の場合は相続税の申告は不要です。

相続によって所得税の申告が必要な場合

相続が発生した場合、相続税の申告が必要となり場合があります。次に所得税の申告が必要な場合とはどのようなケースなのか解説していきます。

被相続人が確定申告の必要があった場合

被相続人に元々所得があり、確定申告を行っていた場合、準確定申告が必要となります。準確定申告は被相続人に申告が必要な所得がある場合、所得税の申告を相続人が代わりに行うものです。準確定申告は相続発生から4カ月という短い期間に資料を集めて申告を行う必要があります。

具体的には被相続人が不動産などの賃料収入があった場合や年金の受給金額が400万円を超えるケースでは、準確定申告が必要となります。賃貸不動産がある場合、相続発生後様々な手続きが必要となります。相続人が複数いる場合、相続発生後に遺産分割協議で決めると、期限内に申告が行えない事例もあります。相続人の負担が大きくならないように、遺言の作成や生前に贈与をするなど、あらかじめ財産を受ける人を決めておくことも検討しておいたほうがよいでしょう。ただし、生前に贈与すると贈与税の課税対象になります。贈与税の方が税負担が大きくなりますので、メリット・デメリットをふまえて判断する必要があります。

他にも年金や給与所得以外の雑所得が1月1日~亡くなるまでの間で20万円を超える場合、確定申告が必要となります。雑所得とは副業やフリマアプリで売却した際に得られた利益なども含まれます。

なお、医療費控除などで、税金の還付を受けられる場合、準確定申告をすることで、相続人が税金の還付を受けることができます。ただし、税金の還付は払い過ぎた税金が戻ってくる制度ですので、必ずしも申告する必要はありません。

相続が発生したら、被相続人が毎年確定申告を行っていたかどうかを確認しましょう。毎年確定申告を行っていた場合、申告が必要である可能性が高いです。

相続人の所得として申告が必要となるケース

相続発生後に相続人の所得して申告が必要な場合もあります。相続発生後に相続人の所得して確定申告書を作成する必要がある代表的な3つの例について確認しておきましょう。

①賃貸不動産を相続した場合

他人に賃貸に出すことで、事業を行って収入を得ている不動産を相続した場合、相続発生後も収入が入り続けます。相続が発生したあとの賃料は相続人の収入となりますので、確定申告が必要となります。

例えば、4月30日に被相続人が死亡した場合、1月~4月までの収入は被相続人の収入として準確定申告が必要となり、5月以降の収入については、相続人の収入として翌年3月15日までに確定申告を行う必要があります。

賃料は被相続人の死亡に係わらず収入が入り続けます。どこから相続人の収入となるのかによって、課税の対象が異なりますので、収入が誰にいつ入るのかを計算しておく必要があります。

②死亡保険金を受け取った場合

被保険者、保険料の負担者ともに被相続人で、相続人が死亡保険金の受取人となっていた場合、相続税の対象となります。

一方で、被保険者が被相続人で、相続人が保険料を負担している生命保険の死亡保険金を受け取った場合、所得税の対象となります。

受け取った死亡保険金を一括で受け取るか、分割して受け取るかによって所得税の課税方法も異なります。一括で受け取った場合は一時所得。分割して受け取る場合は雑所得となります。受け取り方法に応じて課税区分が異なりますので注意しましょう。

③相続した不動産を売却した場合

相続人が相続発生後に相続した不動産を売却した場合は譲渡所得として所得税の対象となります。譲渡所得の対象となる金額は収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いた金額です。

取得費がわからない場合は、譲渡金額の5%を乗じて計算します。相続した土地や建物を相続発生から3年10カ月以内に売却した場合は相続税を取得に加算することができる特例を適用することができます。

このような特例は適用できることを知って、正しく申請しなければ、税額が軽減されることはありません。申請漏れがないように注意しましょう。

判断に迷う場合は税理士に相談を

相続が発生したら、まずは被相続人の財産を一覧にして、相続税や所得税の申告・納税が必要かどうかを見極めることが重要です。もし、納税が必要な場合、早めに対応する必要があります。特に準確定申告は相続開始から4カ月以内と期限が短いため、相続発生後すぐに準備する必要があります。

期限に遅れると加算税が課される可能性もありますので、申告をするべきかわからない場合や、申告手続きや税務署に提出する書類の準備に不安がある場合は相続税や所得税について詳しい知識を持つ税理士に相談するようにしましょう。相続税や所得税は税制改正によって制度がかわることがよくありますので、最新の情報を持つ実績のある専門の税理士に相談ことが重要です。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい