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内縁の妻に相続権はある?

2022年07月16日

相続が発生すると法定相続人で財産を分けることになります。では、婚姻関係にない、いわゆる内縁の妻(夫)がいた際にはどのような扱いとなるのでしょうか。内縁関係にある方の相続では問題が起こりやすく注意が必要です。

当記事では内縁の妻がいる場合の相続についてポイントを解説します。

内縁の妻(夫)に相続権はある?

内縁関係とはあらゆる事情があり婚姻届は出しておらず、法律上の婚姻ではないものの何十年も生計をともにし、一般の結婚をしている夫婦のような生活を、亡くなるまで長年続けている事実婚のパートナーのことを言います。愛人のように食事をしたりデートをしている関係だけではなく、事実上の夫婦として同居をして生計を一にしているということが重要です。

結論から説明すると、法定相続人は民法第886条から890条の中で家族の定義が定められており、内縁の妻(夫)は相続人ではありませんので、財産の相続権はありません。そのため、内縁の夫(妻)が亡くなっても財産を受け取ることができません。内縁の妻は遺族年金も受け取ることができないなど、法律上の婚姻関係でないことでデメリットも多いのです。

戸籍のうえで法定相続人ではありませんので、被相続人に親、兄弟、甥・姪がいる場合、遺産は親族で相談のうえ、相続する割合を決めて財産を分けることになりますので遺産相続のための協議に参加することはできません。ただし、生命保険の受取人に指定されていた場合、保険金は受け取ることができます。

内縁の妻(夫)が財産をもらう場合、どの範囲まで法定相続人となるか知っておくことが重要です。例えば、兄弟姉妹が亡くなっている場合、甥・姪は相続人となりますが、甥・姪の子どもまでは相続人とはなりません。実際にどこまで相続人に該当するかチェックしておきましょう。

他に相続人がいない場合、特別縁故者として家庭裁判所に請求すると寄与分が認められる場合があります。家庭裁判所に認められば財産を受け取れる可能性があります。特別縁故者とは相続人以外の人が介護などで被相続人と深く携わっていた場合に認められる制度です。

内縁の妻に子がいる場合も原則相続人とはなりませんが、認知をすることで、法定相続人となります。

内縁の妻(夫)に財産を遺す方法は?

長年連れ添ったパートナーである内縁の妻(夫)を中心に財産を遺したいという方も多いでしょう。内縁の妻(夫)に財産を遺す場合、きちんとした対策を行う必要があります。

具体的には内縁の妻(夫)に不動産や預貯金などの相続財産を遺す場合、トラブルを回避し、スムーズに行えるように遺言書を作成することをおすすめします。遺言書は誰に何を遺すかを決めることができます。内縁の妻、夫は法定相続人ではありませんが、遺言書で指定されている人には遺贈することが可能です。

一方、親が存命の場合、注意が必要です。親は遺留分権利者ですので、父親や母が遺留分侵害を主張した場合、遺言書があってもすべての財産を内縁の妻(夫)に遺すことができません。

遺留分は最低限その人が主張すれば受け取ることができる制度です。遺留分に相当する額は親に遺すように指定しないと親から遺留分を請求される可能性がありますので注意しましょう。親が遺留分を主張した場合は必ず遺留分に相当する金額の財産を渡す必要があります。ただし、親が相続放棄の意思を表示をしたケースでは、すべて内縁の妻(夫)が財産を受けることが可能です。

遺言書を作成した時点で親と遺言者がどちらが先に亡くなるかわからない場合、親の遺す内容で遺言書を作成し、補充的な内容として親が先に死亡している場合は内縁の妻(夫)に遺すという内容で作成することも認められています。状況によって分け方に違いがある場合はこのような作成方法を検討してみてもよいでしょう。

内縁の妻(夫)に財産を遺す場合、子供が相続する場合などと異なり、トラブルになる可能性が高く、注意が必要です。最悪のケースでは裁判に発展する可能性もあります。

相続人との争いにならないようにしっかりと準備をしたうえで法律上有効に成立する遺言を遺す必要があります。費用はかかるものの、自筆証書遺言よりも公正証書遺言を作成した方がよいでしょう。自筆遺言は気軽に作成することができますが、死後に形式不備が見つかるなど要件を満たしていなければ遺言書として無効になる可能性があります。効力のある遺言でなければ、不動産の登記や金融機関の手続きを進めることができません。しっかりとした遺言を作成し、自宅不動産を内縁の妻(夫)に分与することで、内縁の妻(夫)が住み慣れた家に住み続けることもできます。

公正証書であれば、作成した時点で確実に有効になるという大きなメリットがあり、安心できます。遺言書は一部の財産について作成することも可能ですので、不動産のみ内縁の妻に遺すという内容で作成することも可能です。ただし、一部の財産についてのみ記載した場合、原則、内縁の妻(夫)には他の財産を遺すことができませんので、強い理由がなければ全部の財産について財産を遺す相手を決めておくようにしましょう。

また、遺言を執行する執行者も選任のうえ遺言書に記載しておくことで遺された方の負担を減らすようにしましょう。執行者は司法書士など第三者を定めることも可能です。執行を第三者に依頼する場合は、生じる費用などを打ち合わせて生前に契約しておく方が良いでしょう。

遺言書の作成方法や内容については弁護士や司法書士、税理士などが作成のサポートをしてもらうこともできますので、依頼してみるとよいでしょう。知り合いにいない場合は、地方自治体が開催している無料の相談会やサービスなどで紹介してもらえる場合が多いので地方自治体の情報をよく確認して、有効に活用しましょう。

遺言書の作成は元気なうちに進めておく必要があります。遺言の作成は法律行為ですので、認知症になってしまってはできません。

生前に財産を渡す場合は生前贈与も有効です。年間110万円までであれば贈与税は非課税ですので、財産を少しずつ移転するということも可能です。生前贈与は節税対策としても有効です。

ただし、10年分として、まとめて1,100万円贈与した場合、贈与税がかかりますので注意しましょう。

内縁の妻(夫)が相続した場合の相続税は?

被相続人が保有していた財産が基礎控除を超える場合、相続人ではない内縁の妻(夫)が財産を受け取ったとしても、相続人が相続した場合と同様に相続税がかかります。

一定以上の財産を保有している場合、内縁の妻(夫)に残した相続財産は相続税の課税の対象となります。また、内縁の妻(夫)は法律上の配偶者ではありませんので、配偶者控除が適用できず、2割加算の対象となります。

相続税の課税対象となる財産は居住している土地や土地の上に建っている建物、賃借権などの権利、預貯金、金や宝石類、等、承継するさまざまな資産が課税対象となります。

相続税の申告が必要な場合は対象となる財産を調査し、一覧にしたうえで評価を行い、相続発生から10カ月以内に相続税の申告書の提出と税金を納める必要があります。

知識がなく、手続きになれていない方が自分て手続きを行う場合、期限が短いため、早めに手続きの準備を行うことが重要です。申告書の記載の方法や書類の作成方法や特例の条件や添付書類の書き方については税理士に確認するようにしましょう。

ただし、財産が基礎控除以下の場合は相続税の対応は必要ありません。

相続でお困りの場合は税理士に相談を

内縁の妻(夫)や認知した子どもがいる場合、財産分与などで通常よりも考えることが多く、相続手続きや税金の申告が複雑となり簡単ではありません。被相続人の兄弟姉妹と話し合いが必要となることもあるでしょう。

相続が発生したら、まずは流れを理解してひとつずつ対応していく必要があります。相続発生後にゆっくりしているとあっという間に時間が経ってしまいます。手続きや相続税の計算で困った場合は、税の専門家である、税理士が所属する事務所に相談にいくようにしましょう。

税理士の中にも得意分野がありますので、相続税の申告を中心に運営している実績のある税理士を選ぶとよいでしょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい