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相続税の申告をしないとどうなる?

2022年07月17日

被相続人の財産の合計が基礎控除を超える場合、被相続人が亡くなってから10カ月以内に遺産分割を経て、相続税の申告書を税務署に提出する必要があります。一般的に財産を取得する相続人は相続が発生した後、葬儀などで多忙のため、10カ月という期間は短く感じる人が多いでしょう。

相続人の中で代表となった場合は、期限を過ぎることがないように自分で申告の手続きを進めていく必要があります。

もし、相続税の申告を怠った場合、どうなるのでしょうか。今回は相続税の申告をしなかった場合にどのようなペナルティが課されるか、注意点とあわせて解説します。

相続税の申告が必要な人とは

まず、どのような範囲の人が相続税の申告が必要となるのか解説していきます。相続税の申告が必要となるのは基礎控除を超える遺産を保有している方です。

基礎控除は以下の方法で計算します。

3,000万円+600万円×法定相続人

例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除は4,800万円です。

相続税の課税対象となる財産は現金、預金や不動産、生命保険の保険金、金や宝石、債務(マイナスの資産)などあらゆる資産が相続税の課税の対象となります。

また、相続時精算課税制度を使って贈与した場合や、暦年贈与の場合でも被相続人が死亡する前3年に贈与した資産は課税対象となります。

全ての財産を合計して、基礎控除以下となる場合は相続税は非課税となりますので申告は必要ありません。

ただし、配偶者が相続する際の控除や小規模宅地の特例など特例を利用することで相続税の申告が0円になるケースでも申告は必要です。不要だと勘違いしている人も多いと思いますので注意しましょう。

小規模宅地の特例の中でも特定居住用宅地の特例は多くの方が利用する特例です。特定居住用宅地の特例とは330㎡までの小規模な宅地を同居する配偶者などの相続人が相続した場合、評価を80%軽減できる制度です。減額できる金額も大きいため、この特例を利用することで、基礎控除以内に収まる方も多くいます。

このような特例を適用することで、結果的に基礎控除以内に収まっていた場合、税金を納める必要はありませんが、申告は必要となります。判断に迷う場合は税理士に依頼するようにしましょう。

相続税の申告を怠るとどうなる?

次に相続税の申告が必要な状況であるにもかかわらず申告を怠った場合、どのような事態となるのか解説していきます。

相続税の申告が必要であるにも関わらず、相続税の手続きや納税を怠った場合、税務調査が入る可能性が高いです。税務署は相続税、固定資産税、所得税などあらゆる国税を一括で管理するシステムを利用しています。

そのため、的を絞って調査をしています。財産を多く保有する方の相続が発生したにも関わらず、相続税の申告がなかったら金融機関の入出金を確認したり、保有している不動産の登記を調べたり、あらゆる情報を調べて申告の義務を怠っていないか調査、申告に不備があった場合指摘し、修正申告を命じます。

遺産相続の手続きは銀行の名義変更や不動産の登記手続きなど様々な承継手続きを行う必要があります。負担も大きく時間もかかりますので、相続税の申告も早めに準備して対応するようにしましょう。

相続税を申告しなかった場合のペナルティ

原則、相続税の申告が必要であるにも関わらず相続税を申告しないまま期間を過ぎてしてしまった場合、ペナルティが課されます。相続税を申告しなかった場合のペナルティは大きく分けて3つに分けることができます。相続税の申告を怠った場合のペナルティについても知っておいた方がよいでしょう。

無申告加算税

無申告加算税とは申告をしなかった際に課される加算税です。無申告の場合、納付するべき税額に15%上乗せした金額を追加で納税する必要があります。加算される金額が50万円を超える場合は20%の加算となります。無申告となった際のペナルティは重く、相続税の負担が大きくなるのです。

ただし、期限後1か月以内に自主的に納税した場合はペナルティは課されません。

重加算税

重加算税とは財産を意図的に隠したり、偽りの財産を記載したりした場合など、悪意がある場合に課される追徴課税です。過少申告をした場合の重加算税は35%追徴で課税されます。無申告かつ悪意がある場合の追徴課税は40%と高い税率が課されます。

悪質性に応じて高い税率が課される制度となっています。

延滞税

上記の加算税に加えて申告期限を過ぎてから納税した場合、延滞税も課されます。延滞税は納税の猶予を受けていたのと同じ考え方になりますので、延滞した期間の借金の利子を払うような仕組みです。延滞税の税率は金利情勢などによって変動します。

また、申告期限から2カ月以内と2カ月経過後で異なる税率が課されます。

令和4年時点では2カ月の期間は年2.4%、2カ月経過後から8.7%です。

税務調査は申告期限を過ぎてから来ますので、基本的に加算税や重加算税に加えて延滞税も課されることで、実際の納税額は大幅に増えてしまいます。

延滞税については毎年変更されますが、国税庁のホームページで確認することができます。

なお、無申告ではなく、相続税の延納をした場合にも一定の利子税が課されます。

相続税に時効はある?

相続税の申告をしなかった場合、事前に通知が入り、税務調査が入ります。しかし、税務署はシステムを使って相続税や贈与税の申告漏れを指摘していますが、すべての申告漏れを指摘できているわけではありませんので、事実申告をせずに逃げ切った方もいるでしょう。

相続税の申告期限は法定申告期限から通常は5年、悪質な場合は7年です。時効を把握しておくことは否定しませんが、時効があるから逃げ切れるとは思わない方がよいでしょう

財産の総額が1億円以上あるような資産家の方の方が調査は入りやすとはいわれています。しかし、いくら少額の納税でもいつ、調査が入り指摘されるかはわかりません。新型コロナウイルスが蔓延した影響もあり、電話での調査も多くなり、調査件数も増加傾向です。明確に調査対象が定められているわけではありませんので、誰でも調査対象に該当する可能性があるのです。

申告を怠って、指摘を受ければ加算税や延滞税を請求される可能性が高いので、期限内に正しく申告することをおすすめします。

生前にできる対策とは

自分でお金の管理をしている方は遺された家族がしっかりと申告手続きができるか不安に感じる方も多いでしょう。そのような方はある程度、対策を行っておくことで準備をしておいてもよいでしょう。遺された家族が無申告とならないように、生前にできるおすすめの対策を紹介します。

遺言を作成しておく

遺言書は相続人が2人以上いる場合に財産配分をきちんと明確にしておくという目的で作成される方が多いと思いますが、相続税申告のために手続きをスピーディに進める手段としても有効です。

相続税申告は遺産分割協議のあとに申告の書類を作成していくという流れで行います。遺言を書いておけば、誰が何をどれくらいの割合で相続するか事前に方針を決めることができますので、遺産分割協議をする必要がありません。遺言書は一部の財産について書くことも可能です。一部の財産について書くだけでも、書かれている部分のみ財産を遺す人を決めることができます。

遺言者の意思を書面でしっかりと遺すことで、相続人は遺産分割について協議をする必要がないため、スピーディに申告手続きに入ることがでるというメリットがあります。

財産の一覧を作成しておく

被相続人の保有していた相続財産の種類が多い場合、調査するのは本当に難しいものです。大きな資産でなくても、数が多いと大変になります。

カテゴリごとに土地や建物など財産の内容、評価額や残高をまとめ、記載した一覧の表を作成しておくことで、相続税がかかるということが認識できますし、取引している金融機関を探すなど調査にかかる時間を省くことが可能です。

書き方に決まった形式があるわけではありません。簡単なものでも、具体的に財産内容を記載しておくことで財産がどこにあるかわかるので残された親族の手続き負担を減らすことができるはずです。

評価額は作成した時点の評価となりますので、相続発生後、再度作成する必要はありますが、先に概算で作成しておけば目安として利用するには活用する分には良いでしょう。

ただし、自身で作成する財産の一覧で漏れがあると相続人が困惑しますので、漏れがないように慎重に作成し、漏れなく記載することが重要です。

相続税の申告は税理士に相談を

課税対象の財産が基礎控除額を超え、相続税がかかる方は必ず申告手続きを行う必要があります。

相続税の申告は複雑で、相続開始から10カ月と期限も短いため、知識や経験が無い方が代表となり自分で対応を行うのは非常に難しいものです。書類の作成や申告手続きに悩んでいる方は税の専門家である税理士を紹介してもらいましょう。

費用はかかりますが、実績のある税理士に依頼することで、添付する資料の作成や特例の利用などを間違いなく行うことができます。

税理士にも得意分野がありますので、単に家の近くの税理士よりも、相続税に強い税理士や事務所に相談するようにしましょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい