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相続放棄をしても空き家の管理義務は残る?

2023年11月26日

財産を相続する際に被相続人の債務が多い場合、相続放棄を選択することがあります。

相続人全員が相続放棄をすると、被相続人が住んでいた自宅不動産は空き家となってしまいますが、相続人はそのまま放置してもよいのでしょうか。相続放棄をした際の財産を放っておくこともできず、どうしたらいいのか同じ悩みを抱えている方も多いでしょう。

当記事では相続放棄の流れや相続人全員が相続放棄をした場合の空き家の管理義務について解説します。

相続放棄とは

人が亡くなると、原則相続人が財産を分けることになります。相続放棄とは相続財産をすべて放棄することで、放棄をすることで最初から相続人でなかったことになり、相続に関する権利・義務を失います。相続放棄をすることで、預貯金や株式、土地・建物、金などの現物資産等プラスの財産を相続するというメリットを失いますが、借金などマイナスの財産を引き継ぐデメリットもなくなりますので債権者に負債の弁済をする必要はありません。相続放棄を検討する際は、手続きを行う前に財産を一覧にして、実際に何を保有しているか、内容や評価額をチェックしてから相続権を放棄するか否か慎重に検討した方が良いでしょう。財産の一覧が生前に用意されておらず、簡単にわからない場合は、相続放棄の期限もふまえて早めから着手する必要があります。

一度放棄をすると一切、撤回することはできませんので、保有している資産についてよく確認してからでないと価値がある財産も遺産相続する権利を失う可能性があります。

相続放棄は被相続人の死亡から3か月以内に家庭裁判所に必要事項を記入した申述書といわれる書類を提出して、手続きを行う必要があると定められています。手続きを経ずに財産を全く引き継がないことを相続放棄ということもありますが、民法上の放棄を行う際は、3カ月という短い間に判断し、必ず裁判所に申立を行う必要があります。

空き家の管理義務

相続放棄を行うと法律上の権利義務がなくなるため、空き家の管理義務も無くなると考える方が多いと思います。実際には、固定資産税などの税金を支払う必要はありませんので節税にはなります。しかし、注意点としては他の相続人か後順位の相続人に空き家を任せるまでは、放棄をした相続人も管理の責任を負う可能性がある点です。

相続は配偶者は必ず相続人となり、その後、子ども、親、兄弟姉妹へ親族に移っていきます。特に兄弟姉妹が相続人となる場合は多数になる場合がありますので、戸籍謄本で誰が相続人となるか調査しておく必要があります。。

例えば、子供が相続人のケースでは被相続人の兄弟姉妹が相続人となる可能性があります。後順位の人に相続人が放棄することで、後順位の相続人に権利義務が移ったことを知らせないと、財産を承継するか選択肢を検討することができませんので注意が必要です。相続放棄をできる時間は限られていますので、自分以外の相続人に必ず連絡しておくようにしましょう。

プラスの財産の範囲内で債務を返済する限定承認は相続人全員で一緒に行う必要がありますが、相続放棄は単独で行うことが可能です。

後順位の相続人も含めて、全ての相続人が放棄を行い、相続人不存在となった場合は、財産を精算する相続財産精算人に任せるまでは空き家の管理義務は続いてしまいます。相続財産管理人は家庭裁判所が選定し、弁護士などが選任されます。

空き家を放置するリスク

実際に被相続人が所有していた空き家を放置することでどのようなリスクがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

周辺住民に迷惑をかけるリスク

被相続人が亡くなってから、年月が過ぎ、空き家が老朽化した状態で放置した場合、保存状態が悪くなり、台風で瓦が吹き飛んだり、壁や屋根が壊れたり、建物が倒壊したりして、周辺住民が損害を受ける可能性があります。適切に管理ができていないと判断され、空き家となっていたことが理由で周辺住民が被害を受けた場合、管理責任を問われます。現に修理や治療にかかる費用について損害賠償請求が行われ、支払う義務が生じる可能性があります。

親が所有者であった場合、実家となりますので、周辺に知り合いがいることも多く、トラブルに巻き込まれることはなるべく避けた方がよいでしょう。

不法投棄や犯罪に利用されるリスク

長い間、空き家として放置していると大型ごみの不法投棄や、犯罪者に占有され、犯罪に利用される可能性があります。草抜きや風通しを定期的に行うことができれば、周囲にも管理している人がいることを知ってもらえますが、長い期間放置していると誰も管理していないことがわかってしまいます。雑草はあっという間に増えてしまいますので、近くに住んでいる者でないと、きれいに保つことは負担も多く、実質的には難しいでしょう。

空き家のある土地を国に引き取ってもらう制度が新設

2023年4月より相続土地国庫帰属制度という法律が施行されました。

この制度を利用することで、精算人が選任されていなくても、直接、住所地の管轄の法務局の窓口で申し立てを行い、対象の土地を国庫に帰属させる制度です。

ただし、この方法はあくまで土地を引き渡すことができる制度で家が建っている場合は解体するなど処分をして更地にした状態で申請する必要があります。

空き家となる可能性がある土地がある場合は事前に遺言の作成を

空き家となる可能性がある土地がある場合、事前の対策として遺言を書いておくことをおすすめします。相続開始後も土地の登記がされておらず、管理も売却もされず、持ち主不明となっている土地が多いことが社会的な問題となっており、メディアでも報じられています。

相続人の数が多い場合や関係が良くない場合、相続が発生した時には遺産分割の協議でまとまらない可能性が高いため、事前にシミュレーションを行い、誰に名義変更をするか決めておいた方がよいでしょう。生前に遺言を作成しておくことで、配分を明確に指定することが可能です。

遺言を作成する場合は、法定の遺留分などにも配慮して、配分や金額を決める必要があります。遺言は何度でも変更することができますので、将来変わる可能性があっても現時点での考えを書いておくと良いでしょう。遺言の書き方が分からない場合は税理士、司法書士、弁護士などに依頼することが可能です。

相続に関する相談は税理士に相談を

相続税や相続手続き全般にかかる相談は専門家である税理士に相談するとよいでしょう。自分で行うことが難しい場合や方法が分からない場合は税理士に依頼する必要があります。相続税の計算や申告手続き、資料の作成などの対応をサポートしてもらう場合は報酬を支払う必要がありますが、初回の相談は無料で応じている場合が多いです。

相続放棄は3ヶ月と期限が短いため、あっという間に過ぎてしまい、考える時間はあまりありません。まずは気軽に電話で相談してみましょう。

上記の制度のように新しい制度を活用することで手続きがスムーズにいくこともあります。相続関連では他にも改正が多くありますので、最新の情報を持つ税理士に依頼すると安心です。

税理士に依頼する際は相続税や贈与税に強い税理士に依頼することが重要です。相続税や贈与税は頻繁に法改正もありますので、税理士事務所・税理士法人のサイトを検索する場合は相続税申告の実績などについて確認して依頼するようにしましょう。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい