遺産の中には本来の相続財産ではないものの「みなし相続財産」と呼ばれているものがあります。相続・遺贈される財産の中で課税の対象となる財産には預貯金、株式・投資信託などの有価証券、土地・建物などの不動産、金などの現物資産、債務など、相続人が取得するあらゆる財産が相続税を計算する際の対象となる課税制度となっています。
相続が発生するとまずはそれぞれの財産を一覧の表にして、相続発生時点の評価を確認する必要があります。一覧を作成する際にみなし相続財産も評価した上で申告・納税を行う必要があります。
当記事ではみなし相続財産の種類や概要、相続税の申告をするうえでの取り扱いや取得した際の対応について解説していきます。
みなし相続財産の代表例
相続税法のみなし相続財産にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なみなし相続財産や基本的な税務上の取り扱いについて紹介します。
生命保険の死亡保険金
被相続人が被保険者となっている生命保険の死亡保険金は受取人の固有の財産として取り扱われますので、民法で定められている遺産分割協議の対象ではありません。遺言があって財産配分の方針が示されていても生命保険の受取人が優先して受け取ることになります。法定相続人以外を受け取るように指定することもできますし、相続放棄をした人でも生命保険の死亡保険金は受け取ることができます。
しかし、死亡保険金は相続するお金と非常に性格の近いものであり、税法上は相続財産とみなされて相続税の課税対象となっています。この場合の課税対象となる額は支払った保険料ではなく、受けとった保険金の額が相続税の課税対象となります。
ただし、生命保険は非課税枠が定められており、500万円×法定相続人の人数は非課税で財産を遺すことができます。例えば、法定相続人が3人いる例では1,500万円まで非課税となり課税対象から免除されますので、被相続人の財産の額が基礎控除を超えるようなケースでは簡単にできる相続対策として有効な方法ですので多くの方が利用されています。
特に法定相続人の数が多いケースでは節税のメリットが大きくなります。法定相続人の範囲を把握しておくことがポイントです。ただし、孫などを受け取り人にしている場合は相続税の2割加算の対象となりますので注意しましょう。
また、生命保険は遺産分割協議を経ることなく、自分ひとりで出金することができますので、相続発生後の当面の生活資金の確保もできるので残された遺族も安心です。
生命保険は保険会社や銀行などの金融機関で取り扱いがあります。保険会社によってサービス内容も異なりますので家族とも相談して検討しましょう。
死亡退職金
生命保険の次に多いのが生前に勤めていた企業から支払われる死亡退職金です。
死亡退職金とは現役で働いている者などが亡くなった際に死亡と退職が同時に起こった場合に、会社の規定によって、一定額が勤務先から払われる退職金です。会社の利益に貢献した従業員が亡くなった際に本来退職していれば支払われるものを死亡時に支払うものと考えるとよいでしょう。
死亡退職金も本来の相続財産ではありませんが、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。
ただし、死亡退職金も生命保険と同様に非課税の枠が定められており、同じ計算式(500万円×法定相続人)非課税を計算することが可能です。例えば相続人が3人の場合は1,500万円以下であれば、相続財産に加算されることはありません。
定期金を受け取る権利
個人年金保険などの契約で年金形式で定期的に金銭を受け取る契約についてみなし相続財産として給付を受ける予定の金額が相続税の課税対象となります。相続時に精算されておらず、年金の支給がまだ開始していなかったとしても、今後給付される予定の金額が税金の課税対象として、相続財産に含まれますので注意しましょう。
一括支給ではなく、定期金として受け取れる場合でも相続財産として含める必要がありますので注意しましょう。
みなし相続財産の注意点
みなし相続財産には注意点があります。次にみなし相続財産の注意点やデメリットも確認しておきましょう。
相続放棄をすると非課税枠が使えなくなる
生命保険や死亡退職金等みなし相続財産は、相続放棄を行っても受け取ることができます。ただし、相続放棄をした場合、通常とは異なり非課税枠を利用することができませんので、相続税を負担することになります。
このような知識を知っておかなければ、相続税の負担が大きくなります。受け取ったみなし相続財産で非課税枠を利用する場合は相続放棄をせずに遺産分割の協議には参加するようにしましょう。
偏った財産配分によってトラブルになるケースも
生命保険はみなし相続財産として受取人を決めることができます。したがって、遺言を書かなくても相続人のうち一人に多くの財産を遺すことができます。
しかし、父や母が亡くなった時に1人の子に多額の資金が受け取り人にするような契約内容になっていると、相続発生時に受け取る際に、実質的に法定相続分とは大きな差がでてしまいます。のちのち相続の際の分割がきっかけでトラブルになり、関係が悪化するケースもあります。契約後でも電話などで受取人を変更することはできますので、相続人が2人以上いる場合は事前に確認しておくようにしましょう。
生命保険の保険金は遺留分算定の対象外となっています。保険の金額が低い場合は問題ありませんが、財産のうち保険の割合が多い場合は遺留分算定に加味するという判決が出たケースもあります。万が一相続人間で偏った配分となったことで不公平となりトラブルになる可能性がある場合は弁護士に相談していただく必要があります。
相続に関する相談は税理士に相談を
今回の記事ではみなし相続財産について解説しました。
相続・贈与の税に関連する制度や法律は複雑で、なかなか一般の方には理解しにくい部分も多くあります。また、事情は家庭によりさまざまなので、どこで問題が発生するかわかりません。
相続は人生で何度も経験するものではありませんので、知識が無くて当然です。税理士に依頼することで費用はかかりますが、基礎控除を超える方は生前贈与や生命保険を活用することで、相続人にかかる負担を大きく減らすことができるケースもあります。
また、相続税の申告は相続発生から10ヶ月以内という短い期間で、遺産分割協議や金融機関の名義変更や、小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減などの特例の適用可否の判断も行いながら手続きを終える必要があります。財産の内容によっては期限内に評価をすることが難しい場合もあります。
また、正確に申告をするということも重要です。例えば、みなし相続財産を申告する際の財産に記載が漏れていた場合、過少申告となってしまいますので、税務調査で加算税を請求される可能性があります。
そのため、手続きが煩雑で難しいという理由で専門家である税理士に申告を依頼する方も多くいらっしゃいます。税理士には遺言書の書き方や相続税対策全般、不動産の登記について問合わせすることが可能です。
まずは相続の手続きについて流れを理解することが重要です。
税金には所得税や法人税など様々な分野があり税理士にも得意分野がありますので、相続税や関連の強い贈与税については遺産相続の業務実績と経験がある税理士事務所・税理士法人に気軽に相談するようにしましょう。初回の面談の際に財産や相続人について具体的にわかる資料を持っていくと今後の相談がスムーズに進みやすくなります。
広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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