お役立ちコラム一覧

貸家の相続税評価額が低くなる理由と具体的な計算方法

2022年02月02日

「賃貸に出している貸家を相続税対策に活用できると聞いたけど本当」などの疑問をいだいている人は多いのではないでしょうか。
通常は専門的な知識がないと、相続税対策に活用できる理由がわからないでしょう。
相続税対策に活用できる理由は、自用家屋・自用地とは評価方法が異なるため相続税評価額を抑えられるからです。ケースによっては、有効な相続税対策になりえます。対策を打つためには、資産を評価する際の理由や背景も理解する必要があります。

この記事では、貸家の評価方法を解説しつつ相続税評価額を抑えられる理由を説明しています。
さらに、具体例を挙げて、貸家・貸家建付地と自用家屋・自用地で相続税評価額にどれくらいの差が生じるかを示しています。
以下の記事を参考にすれば、貸家を相続税対策に活用できる理由が簡単にわかるはずです。相続を控えている方は確認しておきましょう。

相続税評価額が貸家だと低くなる?

同じ建物・土地であれば、貸家・貸家建付地のほうが自用家屋・自用地よりも相続税評価額は低くなります
理由は、両者の評価方法が異なるからです。
不動産の評価は、土地と建物の評価額を合計して行います。
建物部分の評価方法は以下の計算式のとおりです。

【建物の計算方法】

借家権割合(借主が家屋を使用する権利)は30%です。

賃借割合は課税時期に貸していた専有部分の床面積を家屋における専有部分の総床面積で除して求める制度となっています。

次に、土地の計算方法は以下のとおりです。

【土地の計算方法】

借家権割合と賃借割合は建物と同じです。借地権割合は、地域によって異なり、全国の路線価図、評価倍率表(倍率方式の場合)に記載されています。路線価図に記載されているA~Gの割合は次のとおりです。

記号 借地権割合 
90% 
80% 
70% 
60% 
50% 
40% 
30% 

ここまで見てきた内容からわかる通り、貸家・貸家建付地は自用家屋・自用地よりも相続税評価額が下がります。
評価額を抑えられる理由は、敷地にアパートなどを建築して経営していると入居している借主の権利を考慮しなければならないため自用家屋・自用地に比べると制約を受けるからです。
所有者が自由に使うことができないため、同じ宅地でも駐車場など、更地にしている場合と比べて相続税評価は減額できるといえるでしょう。

貸家と自用家屋の相続税評価額の比較

貸家・貸家建付地と自用家屋・自用地で相続税評価額はどれくらい異なるのでしょうか。
以下の条件で計算します。

【建物】

【土地】

自用家屋・自用地の評価額は次のとおりです。

【評価額】

貸家の評価額は次のとおりです。

【評価額】

自用家屋と自用地の相続税評価額は4,500万円、貸家と貸家建付地の相続税評価額は3,681万円です。建物と土地は同じですが819万円の差が生じています(具体的な金額は、借地権割合、借家権割合、賃借割合で異なります)。

小規模宅地の特例は貸家を建てている土地にも適用できる

アパートやマンションなどの貸家を立てていると貸家建付地も貸付事業用宅地として、最大200㎡まで50%減額する特例を適用することができます。ただし、自宅について最大330㎡、80%まで減額することができる特定居住用宅地の特例を利用する場合、面積を按分して適用することになりますので、評価額が同じ土地であれば、特定居住用宅地の特例を利用する方が有利となります。

小規模宅地の特例は、国税庁のHPでも概要を確認することができますが、条件が複雑です。誤った申告をすると税務署から指摘される可能性もありますので、自分で判断することが難しい場合は、税理士に相談して対応を決めるようにしましょう。

貸家を建てる注意点

貸家を建築し、人に住宅として貸すことで、相続税評価を時価よりも大きく減額することができるため、実際にかかる相続税は大きく抑えることができます。効果の高い相続税対策といえるでしょう。また相続税が下がるだけでなく、家賃収入を得ることで、生活を安定させることもできます。

しかし、注意点もありますので、ポイントを抑えて紹介します。

まず、把握しておくべきことは賃貸経営にはリスクがあるということです。具体的には長年空室が続いて、費用だけがかかるリスクや天変地異などによって建物が大きくダメージを受けるリスクなどがあります。

空室リスクについては物件の所在地などによって大きく左右されます。相続税対策に成功しても、それ以上に賃貸経営で損失を出してしまっては意味がありませんし、継続的に運営することが相続人にも負担になる場合があります。リスクについてもしっかりと理解して始めるようにしましょう。

貸家を建てるか検討する際はまず、現在の状況をチェックしておくことが必要です。相続財産を一覧にしてどれくらいの相続税がかかりそうか把握してから方針を検討するようにしましょう。そのうえで、貸家が建ったことでいくら相続税を下げることができるかプランを作成し、シミュレーションをするとよいでしょう。

相続税対策に貸家を検討

いかがでしたでしょうか?
貸家の相続税評価について解説しました。
自用家屋・自用地のように、自分で自由に利用することができないため、貸家の相続税評価額は低くなります。
したがって、相続税対策として活用できる可能性があります。気になる方は、専門家である税理士に相談するとよいでしょう。

税理士に相談する際は相続税・贈与税の実績が豊富な税理士に相談すると安心です。多くの税理士は初回の相談は無料で相談に応じてくれます。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
税理士選びにお困りなら、まずは無料相談でお気軽にご相談ください!

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい