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相続税対策の必須知識!生前贈与の持ち戻しとは?

2023年08月01日

基礎控除を超える財産を保有している人は相続税対策の一環として生前贈与を実施している人は多いでしょう。税制改正大綱が発表され、2024年から相続税・贈与税に関する大きな改正が予定されていることをご存知でしょうか。当記事では税制改正で大注目の生前贈与の持ち戻しについて解説します。

生前贈与の持ち戻しとは

生前贈与の持ち戻しとは相続発生前3年以内に贈与された財産について相続税の課税対象財産として加算される制度です。暦年贈与では年間110万円まで非課税となりますが、生前贈与の持ち戻し制度によって被相続人が死亡する直前に贈与された財産については、相続財産に戻すことになり、相続税対策になりませんので注意が必要です。

そのため、生前贈与で、相続財産を圧縮し節税効果を発揮するためには長い時間をかけて対策をする必要があるのです。

被相続人が亡くなる前3年間に贈与をした財産について申告書に記載していなかった場合、税務調査で指摘される可能性があります。税務署に指摘された場合、通常よりも高い加算税がかかってしまいます。税務署は目を付けた納税者に対して、財産の内容や資金の異動を徹底的に調べますので、誤りがないように申告をするようにしましょう。

ただし、持ち戻しの対象となるのは、贈与を受ける者が相続人か、遺言によって財産を取得する場合のみです。そのため、配偶者や子は対象となりますが、相続人ではない孫などが遺贈されない場合は、贈与を受けた分について持ち戻しの対象外です。

2024年の税制改正

2024年に、相続・贈与税の改正が予定されています。どのような改正か見ていきましょう。

暦年贈与の持ち戻し期間が7年に

従来、暦年贈与の持ち戻し期間は3年でしたが、2024年以降の贈与については、亡くなる7年まで延長されます。持ち戻し期間が7年になったことによって、暦年贈与ではかなり早めから贈与をしないと相続財産を圧縮できないということになります。

相続時精算課税に非課税枠が新設

相続時精算課税制度とは2,500万円までの範囲で生前贈与した金額について、贈与税ではなく、相続税の対象として課税する制度です。株式や収益マンション等、収益を生んでいる財産や将来評価額の値上がりが予想される財産を次の世代に引き継ぐ際の対応として利用されていることが多い制度ですが、非課税枠がなく、申告の手間があることから利用数が伸びていませんでした。

しかし、2024年の改正によって、110万円の非課税枠が新設され、110万円以内であれば、申告も不要です。また、暦年贈与のような持ち戻しはありませんので、相続開始の直前まで贈与した財産を課税対象財産から除外することが可能です。

暦年贈与と相続時精算課税制度は選択制となっていますので、相続時精算課税制度を活用した場合は暦年贈与に変更することはできません。それぞれの制度を理解して選択するようにしましょう。

あわせて活用したい贈与の特例

贈与税の制度には暦年贈与・相続時精算課税制度以外にも、用途によって使える特例が用意されています。次にメリットの大きい主な特例について3つご紹介します。該当するケースや注意点について確認しておきましょう。

教育資金贈与の特例

教育資金贈与の特例は孫などに一括で1,500万円までの贈与であれば非課税になる制度です。特例を使って、大きな金額を一度に承継できるため、多額の相続税がかかることになる富裕層の相続税対策として活用されています。

贈与された資金は金融機関で信託され、請求書を提出する必要があるなど取り扱いには面倒な部分があります。

結婚・子育て資金の贈与

結婚・子育て資金の贈与は結婚や子育て資金に限り1,000万円まで非課税で贈与できる制度です。教育資金の贈与とあわせて利用されている制度です。

教育資金の贈与と同様、金融機関で信託する必要があります。

住宅取得資金贈与の特例

住宅取得資金贈与の特例は住宅の購入資金に限り、最大1,000万円まで贈与を受けることできる制度です。そのため、子や孫の住宅取得資金の際に利用されている制度です。

特例で非課税となる金額以下であっても申告は行う必要があります。

贈与の前にシミュレーションをすることが大切

贈与の金額・対象について検討する際は、財産をまとめて一覧を作成し、実際にいくらくらいの税額がかかりそうかシミュレーションしてから考えることが大切です。現状相続が発生したらどれくらいの相続税がかかりそうか、金融資産、不動産、現物資産を合計して計算して確認するとよいでしょう。贈与も金額によって税率が異なりますが、財産によっては少し贈与税を払ってでもスピーディに贈与をした方が良いケースもあります。

また、贈与をする際は税務だけにとらわれるのではなく、配分についても検討しておく必要があります。贈与が行われたことが理由で、法定相続割合とは大きく異なる割合となってしまい、その影響で相続人間の関係が悪化するケースも多くあります。税額を減らすだけでなく、遺産を巡ってのトラブルを防ぐために配分についても考慮して遺言を作成することもおすすめです。

現時点でどれくらいの税負担がかかりそうか把握してから、家族とも相談して、贈与の金額や配分などを決定していきましょう。

相続・贈与のお悩みは税理士に相談を

今回のように相続や贈与税は頻繁に税制改正があります。そのため、基礎的な知識を得るだけでなく、最新情報をチェックしておくことが重要です。節税対策の方法や配偶者控除等の各種控除や、小規模宅地の特例などの適用可否、申告・納税の手続きなど相続税の悩みは税金のプロである税理士に相談するようにしましょう。税理士によっては無料で初回の相談に応じてくれる場合もあります。

各税理士にも専門分野がありますので、相続や贈与を中心に運営している税理士事務所や税理士法人に相談するようにしましょう。生前に税理士に相談することで、遺言書や贈与の特例についても相談することが可能です。10年~20年以上かけて対策を行うこともありますので、早めに相談するようにしましょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい