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寄与分とは?揉める原因になりやすい寄与分を解説!

2024年01月01日

相続が発生すると、遺産の配分について相続人で話し合う必要があります。被相続人に最後まで寄り添い、介護をした人は法定相続分よりも多くの財産を承継してもよいのではないかと考える人も多いでしょう。

相続人に大きな貢献をした人に認められるのが「寄与分」です。当記事では寄与分が認められるケースや注意点について解説します。

寄与分とは

寄与分とは被相続人の財産の増加や維持に特別な貢献をした場合、貢献度に応じ財産配分の際に法定相続分よりも多くの財産を請求することが民法で法的に認められている制度です。寄与分という制度があるという情報を入手すると、多くの人が自分も認められるのではないかと思うでしょう。しかし、寄与分が認められることは簡単ではありません。

高齢となった親の近くに住む子供と遠方に住む子供がいた場合、近くに住む子供が必然的に買い物や様々な手続きを手伝っていたり、病気になった時の看護をしたりすることになります。場合によっては療養中の買い物をしたときの費用などを親からもらっておらず、出費が負担となるケースもあるでしょう。

しかし、近くでお世話をしただけでは、被相続人が亡くなった後の遺産分割で寄与分が認められるケースは多くありません。夫婦や親子で、兄弟姉妹であれば、認知症などになっている高齢者の生活を多少手助けをすることは当然と考えられているからです。

もちろん、話し合いで近くに住む子供が多くもらうべきだと他の相続人も納得すれば、よいのですが、協議で相続人全員が合意できず、トラブルになった場合は家庭裁判所の調停や審判で決着をつけることになります。

寄与分が認められるためには事業や家業を無償で長年継続して行った場合や金銭や土地など資産を提供していた場合など、通常、配偶者や子等の相続人に期待する程度を超える貢献である必要があります。寄与分には時効はありませんので、数十年前の貢献であっても、要件を満たしていれば寄与分の対象として認められる可能性があります。

寄与分は相続権がある人にしか認められることはありませんので、内縁の妻など法定相続人以外の人が、いくら貢献していたとしても認められることはありません。

寄与分の計算方法

相続人のうち1人が被相続人が代表として行っていた事業を無償で手伝っていた場合など、労務を提供した場合の寄与分は、原則給料として給付されていたと仮定した場合の金額を基準に算定します。具体的な算定方法は以下の通りです。

寄与分=通常であればもらっていた給料の年額×寄与した年数×(1-生活費控除割合)×裁量的割合

裁量的割合とは被相続人と相続人との関係や、専従性などを考慮して、決定されます。

他にも土地など資産を提供した場合には、実際に提供した資産の価値によって算定します。不動産を無償で使用させていた事例の寄与分は以下の通り算出します。

寄与分=賃料相当額×使用年数×裁量的割合

介護や看護をしている場合の計算方法は以下の通りです。

寄与分=介護の日当額×介護や看護をした日数×裁量的割合

実際には、介護の度合いなど判断が分かれるため、寄与分が認められるかの判断は非常に難しいです。決定的な証拠となる資料を揃えることもできないため、他の相続人と問題になりそうな場合は弁護士などに相談して判断するようにしましょう。寄与分が認められるポイントは通常の相続人に期待される範囲以上の行為か否かや継続性がポイントとなります。

寄与分が認められた場合の相続割合

寄与分が認められた場合の相続割合は認められた寄与分として上記の計算式で受け取る分を差し引いて法定相続割合で計算を行います。

例えば、被相続人の相続財産が5000万円、子供が二人で、長男に寄与分が1000万円分認められた場合、長男の寄与分1000万円を差し引いて、残りの4000万円を2分の1ずつ配分しますので、長男が3000万円、残りの2000万円をもう一方の子どもが取得することになり、本来の法定相続分よりも長男が1000万円多く相続することになります。

寄与分がある場合は遺言書を作成しておいた方が安心

寄与分が認められそうなほど介護などで、高い貢献をした特定の親族にお世話になっている例や、多額の生前贈与など特別受益を得ている者がいる場合などは、配分で揉めやすくなりますので、法定相続割合通りに配分することができません。そのため、相続開始後に揉める可能性が高い場合は、トラブルを回避するために相続人同士で話し合いをさせるよりも生前の対策として遺言書を作成し、先に配分を指定しておいた方がよいでしょう。

実際にどれくらいの寄与があったかは被相続人と相続人にしかわかりません。そのため、実際に介護などをしていない、相続人と話し合いで解決することは非常に難しいものです。それぞれの事情もあり、感情的になってしまい、寄与分を巡って争いになるケースも多いです。親が亡くなってから関係を悪化させないためにも遺言で配分を定める方がよいでしょう。

ただし、遺留分を侵害してしまうと、遺留分を主張されると、遺言書通りに配分できないので、遺留分は確保して、極端な遺産相続になり過ぎないように注意しましょう。

相続に関するお悩みは税理士に相談を

相続に関する悩みは十人十色で人によって様々な悩みを抱えています。寄与分や特別受益、財産の評価や遺言書の作成など相続に関するお悩みがある場合は専門家である税理士に依頼し、サポートを受けるとよいでしょう。生前に相談する場合は、相続税のシミュレーションも可能ですので、どれくらいの相続税がかかるか事前に確認しておくとよいでしょう。事前に確認しておくことで、税金の総額だけでなく、特例や控除の利用可否も確認でき、節税につながります。初回の相談は無料で応じてくれるケースも多いので、まずは気軽に相談してみましょう。

特に相続税がかかりそうな場合は、死亡してから10ヶ月の期限内に相続税の申告書や添付書類を提出し、納税する義務があります。短い期間に財産内容の調査や配分についての話し合い、不動産の登記などの対応を行う必要があるため、時間的な余裕がありません。知識がない方は税理士に依頼することで、期限内に手続きを完了させることができるでしょう。相続税や贈与税に強い税理士に依頼することで、税務署から税務調査を受けても、安心して対応することができます。

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